第2章3
6月11日午前11時40分、草加市内の公園――。そこでは、ある転売屋勢力が一方的に被害を受けていた。
「馬鹿な――あれだけの実力者だったなんて、計算外だぞ!」
「ネット上で集めた情報では、確実に勝てる装備を揃えたと言うのに――」
「奴は超有名アイドルに恨みでもあるのか?」
転売屋が一方的にやられている理由は、かませ犬だからという訳ではない。単純に負けフラグバリバリの捨て台詞を吐いた事による物だ。
「これで10人目――」
若干の焦りを見せているような表情だが、グラーフにとっては特に問題はない。むしろ、この表情を見て敵が油断すれば――と考えている。しかし、その表情はメットのバイザーに隠れていて、相手は確認できないのだが。更に付け足すとすれば、グラーフのメットはロボットアニメに出てくるような特殊なメットであり、バイザー部分はほとんど見えない。おそらく、フェイスオープンの様なギミックが仕込まれているとしか思えないような――。
「お前の様な勢力が――ネット炎上を誘発していると気付かないのか! マスコミが超有名アイドルを優遇するのは2代芸能事務所が赤字国債を全て焼却したという英雄的行為の――」
言う事を欠き、お決まりとも言えるような負けフラグを立てていく超有名アイドル投資家とマスコミの連合軍。厳密には、マスコミと言えるかどうか不明なまとめサイトの管理人だが。彼らを撃破したとしても、悲劇の繰り返しは続く。それは、ループ物あるいは1周目のエンディングに到達してもすぐに2周目が始まる初期のコンピューターゲームを思わせる。
午前11時45分、全てが終わった後に島風(しまかぜ)あいかは現場へ突入する。しかし、そこにグラーフの姿はなかった。しかし、現場には別の勢力と思われる一団が集結していたのである。どうやら、全滅した部隊が増援を要請したらしい。
「貴様も異能力者か?」
「異能力者は我々にとってもいレギュラーだ。超有名アイドルに風評被害をもたらす――」
別のまとめサイト管理人と思われる男性が何かを言おうとした矢先、島風はテレポートを使ったのような速度で無言の腹パンを決めた。腹パンを受けた人物は即座に気絶――。相手の方はボディアーマーを装着していた為、衝撃は相当の物だが骨折はしていないだろう。
「異能力を持つフィギュアハンターは絶滅危惧種のはず」
「我々のデータは、既に古くなっていると言うのか?」
「絶対神である超有名アイドルに仇なす勢力は――」
その後も負けフラグ確定な捨て台詞がバーゲンセールのように飛び出すのだが、それぞれの台詞に対して反論する程――島風も暇と言う訳ではない。その為か、連装砲が変形及び合体したレールガンで全てを吹き飛ばす。吹き飛ばされたと言っても――まとめサイト管理人等は気絶しているのだが。
午前11時50分、島風がバトルを展開した場所ではガーディアンが姿を見せていた。そして、現場検証を行う。前に調べた場所は既に警察官が駆けつけており、これ以上の調査が出来ない状態になっていたのも理由の一つである。
「異能力を持ったフィギュアハンターが――絶滅危惧種とは思えません」
「しかし、異能力であれば怪我人が出てもおかしくはない。違うか?」
「確かに異能力者が暴走すれば、怪我人だけでなく建造物にも被害が及ぶのは分かっています。でも、手加減をすれば――」
「異能力者が手加減をしながらバトルをするとは考えられない。それも、目的のフィギュアを手に入れる為に手加減は尚更あり得ない」
「まさか、これがARゲームとでもいうのですか? だから、ネット上にARゲームに対する風評被害が拡散しないように裏工作を――」
ガーディアンの男性二人は会話していく内に、ある真相に気付いたような気配もあった。それは、今回のフィギュアハンターがARゲームだと言う事――つまり、全てはリアルのフィギュアハンターではなく、ゲーム――。仮にゲームではなくても、対フーリガン等の対策としてフィギュアハンターが仮想敵と考えた訓練という路線も捨てきれない。だとすれば、今回のフィギュア争奪は何が目的なのか? 全ては謎に包まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます