第96話 『火の鳥』のアニメとか

さて、今回も。

『火の鳥』

である。


前回『望郷編』はいろんな要素が、これでもかっ、とゆーくらい詰まった話だと書かせていただいた。

よく考えてみると『火の鳥』って全部そーゆー話かもしれない。


『黎明編』

『未来編』

『ヤマト編』

『宇宙編』

『鳳凰編』

『乱世編』

『望郷編』

『生命編』

『異形編』

『太陽編』


だいたいこれで全部かな。

その他、『火の鳥』が作品として固まる前の少女クラブ版とか中断されたCOM版望郷編とかいろいろあるけれど、そこまで気にしていられない。


やはり、長編作品は全てが一人の価値観によってコントロールされた物語ではなく、複数の視点、複数の価値観が存在する物語となっている。

手塚治虫(神)のいろんな挑戦が入った作品。


発表順も面白い。

超過去から始まって超未来へ。

徐々に現代に近づき、過去、未来と語られていき、最後は現代で終わると言われていた。


手塚治虫(神)の対談で語った言葉。

「現代と呼んでも難しい。1950年だって現在では相当な過去になってしまっている。

だから自分の肉体から魂が離れる瞬間。

それこそが現代で、その時こそ現代編を描くべき時」


もちろん死ぬ寸前であるから漫画など描けない。

しかし。


「僕は書いて見せますよ。

 一コマでいいんです。

 それが話となっていればいいんですから」


と言うトンデモナイ発言をしたりもしている。


自分が一番好きなのは『鳳凰編』だろうか。

『復活編』や『望郷編』のような凄まじく挑戦的な作品ももちろん好きなのだが。

『鳳凰編』の物語性は何度読み返してもやっぱり心に染みる。


最初は片目と片腕を失ったため、盗賊として生きて来た我王の物語が語られる。

そこから彼に利き腕を傷つけられ、仏師としての危機に追い込まれた茜丸の方へと視点は映る。

子供心には明らかに悪者=我王で、いい者=茜丸である。

時は流れ、名誉と地位を手に入れた茜丸の醜さ。

全てを失い彫り物師として覚醒する我王の姿。

その対比が両面から語られていく。

一面的でない話で在ることが正に分かり易く提示されている。

この後半の緊張感、大好きなのだが。

アニメ化された時は冒頭の我王の話に焦点が当たってしまい。

茜丸の扱いはゾンザイ。

後半はあらすじ説明みたくなってしまって、非常に残念であった。



アニメ化は何回もされている。

実写映画化もされているのだが、そちらは未見。


『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』

1980年のアニメ映画。

これは原作に無い話で手塚自身が原案・構成・総監督を務めている。

これも近年見返した。

自分が見たことがあるのは短縮バージョンのVHSだけで、2000年過ぎてからやっと122分と言うオリジナルバージョンが出たのである。

現在観ると正直ツライ。

無駄に冗長なシーンが多いの。

1980年だから仕方ないと言う見方も出来るが、当時のアニメはもっと進んでいた筈で、発表時にすでに造りが古いと言われてしまっている。

御厨さと美さんが描いた漫画バージョンも存在しているのだが、そういえば角川版には収録されていないな。


『鳳凰編』

『ヤマト編』

『宇宙編』

60分前後のOVA作品。もしくは劇場公開作品。

1986~87年に作られた。

監督は一本ごとに、りんたろう監督、平田敏夫監督、川尻善昭監督と入れ替わっているが、だいたい一連の作品と考えてよいと思う。


『鳳凰編』は大好きだし、りんたろう監督も好きなのだけど。

これは…………微妙。

一時間では入らない原作を一時間に強引にまとめている。

冒頭のシーンは力が入っているのだが、後半は端折りすぎてなんだか分からない。

『ヤマト編』も同じく。

『宇宙編』は現在でも見て良い作品かと思う

原作自体が短編~中編で一時間の時間制約が丁度いい。

川尻善昭監督作品だし。

機会があったら是非見て欲しい。


その後2004年にはNHKBS放送でテレビアニメ化もされている。

『黎明編』『復活編』『異形編』『太陽編』『未来編』

なのだけど。

自分は途中まで見て止めてしまった。

これも尺が足りなくて、原作をあまりにもカットしている。

それでテンポよく面白くなったか、と言うとそんな事もないんだよなぁ。

一応は高橋良輔さん監督なのだけど。


そう考えていくと、『火の鳥』はメディア化に恵まれていない。

と言うか、どう作っても、あまり評価されない宿命なのかも。

漫画で読むしか面白さが伝わらない。


その中では『エデンの宙』は頑張った方に入るのかもしれない。


『火の鳥』は有名作品なので知っている方は多いと思うが。

ちゃんと読んでねーや、と言う方は読んでみて欲しい。

それに尽きる。

そんな所で今回は終わる。

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