第68話 アニメ『うる星やつら』昭和版
さて。
くろねこ教授です。
アニメ『うる星やつら』昭和版を語ると予告したモノの、これも何処から語っていいやら。
テレビアニメ『うる星やつら』昭和版
1981年~1986年放送。
テレビ全218話に劇場版6本、OVAも多数。
おそらく、全て目を通している……と思う。
初期チーフディレクターは 押井守氏。
その後、『パトレイバー』や『甲殻機動隊』で評価を高める。
ジブリの宮崎駿氏、『ガンダム』の富野由悠季氏、と並んで三大監督と評された事もある。
この時点ではまだ若手である。
制作は株式会社スタジオぴえろ。
1977年にタツノコプロの人材を連れて独立したアニメ制作会社。
その中に押井守も居た。
押井守氏の言によると最初は本当に使えるスタッフがいなかった。
そこで押井は若手スタッフを抜擢したり、アニメーターに好きなようにやらせた。
当初番組の評判は悪く、ファンからの苦情も絶えなかった。
ところが、徐々にスタッフが集まり作画のレベルも上がり、演出も原作の枠を越えてアニメオリジナリティーを押し出した辺りから、評価は逆転した。
視聴率は20%を越え、押井には『視聴率男』の異名まで着いたと言う。
これは番組を見ると明らかなのだが、30分番組2話構成だったものが、30分1話になっていく。
原作に無かった部分を膨らます。
あたるのクラスメイト、メガネ、チビ、角刈り、パーマ等をキャラ立てした程度の物から徐々にエスカレートする。
面堂家に私設軍隊がある事になり、戦車にジェット機がズラズラと画面に並ぶ。
メガネは過度なまでにラムのファンとなり、他の三人とラムちゃん親衛隊を名乗るようになる。
自分で玩具を改造しパワードギアを自作するに至って、あたる以上に目立つある意味影の主役キャラに上り詰める。
この頃の押井守監督の特徴であるエセ理論的な長口舌と、声優千葉繁氏のハイテンションな早口が絶妙にマッチした。
イロイロとんでもない回が産まれた。
フジテレビに最初納品を拒否されたと言われる『みじめ! 愛とさすらいの母!?』。
あたるの母を語り部に夢とも現実ともつかない幻想が繰り返される。
このモチーフが映画『ビューティフルドリーマー』にも使われる事になる。
知る人ぞ知るマンガ『ねじ式』のあからさまなパロディ『決死の亜空間アルバイト』
前半のセリフなんかそのまま『ねじ式』である。
つげ義春先生の『ねじ式』に関してはここで説明しない。
だが一部ではとんでもなく高名な作品なので、興味が有る方は調べて見て欲しい。
上記の面堂のミリタリーなシーン、メガネの長広舌、有名な映画コミックのパロディ、いずれもアニメ『うる星やつら』の魅力であるが。
どれも高橋留美子先生の原作には無いテイストだ。
おそらく作る側も見る側も、これ大丈夫なのか、テレビでこんなんやっていいのか、と言うスリルや挑戦そのものを楽しんでいたと思う。
押井監督は後にテレビを使って演出の練習やらせて貰った、と言ったりもしている。
絵に関しても、作画監督ごとの個性を出すことに歯止めをかけなかった。
森山ゆうじ氏の画が代表と思われるが、元のデザインより明らかに目が大きい。
だけど、こっちの方が可愛いじゃん、と人気を博したのである。
高橋留美子先生のキャラだって、連載当初と後半では大分画が違う。
アニメだって多少違ってたってよかろーもん。
その後人気アニメーターになる森山ゆうじ、西島克彦、土器手司、平野俊弘らが好きなように書いた。
そんな訳で『うる星やつら』のキャラクターグッズなども絵柄の異なるモノが多数ある。
80年代の後半にかけてアニメブームと呼ばれ、アニメーターにも注目が集まった。
それまでデザイン通りの絵を忠実に描く事が上手いアニメーターと思われていたが、個性を出して魅力的な画を描く人間に人気が出たのである。
その原因が全て『うる星やつら』に有る訳では無いが、中心であった事は確かだ。
現在では原作をないがしろにしている、としてファンにそっぽを向かれかねない。
当時の原作ファンだって一部眉をひそめていた人もいたようなのだが、多数派では無かった。
原作者高橋留美子先生はと言うと、所々の回は良かったと言っている。
が、押井テイスト満載の映画『ビューティフルドリーマー』に関しては。
「あれは押井さんの物であって私には関係ない」
と距離を取る発言をしている。
大人の対応をしながらも内心穏やかざるモノもあったのだろう。
そんな訳で人気絶頂ではあったが、1984年に押井守は体力的限界を理由にチーフディレクターを降り、スタジオぴえろを退社する。
独立して『天使のたまご』『御先祖様万々歳』などくろねこ教授としては大好きな作品を作るのだが。
一方世間的には拒否されて、しばらく仕事が無い状況となった。
1988年に『パトレイバー』でまた話題の監督として復帰する事になる。
テレビアニメ『うる星やつら』はやまざきかずおがチーフディレクターを引き継ぐ。
制作会社もスタジオぴえろからディーンになる。
やまざきかずお氏は当初、番組を原作路線に戻すと言っていた。
だけどスタッフに圧されたのか、ファンの期待に答えたのか、結局オリジナルティストの溢れるアニメになっている。
後、これは別に『うる星やつら』の責任だけでも無いとは思うのだが。
そのヒットによって、少しえっちな恰好した美少女を前面に押し出したアニメが増えたのは事実だと思う。
それまでのアニメだって、一部男性ファンに需要があるのは勿論理解してただろう。
『ヤマト』だって、なんだってヒロインは美人だし多少のサービスシーンはあったりした。
でも、それはアクマでちょっとしたサービスであって、前面にバーンと押し出す物では無かったのだ。
テレビだし、オコサマが見るし、と遠慮していた部分もあるだろうし。
美女で客釣ってる訳じゃ無いんだよ、とゆーカッコツケもあるだろう。
その遠慮が無くなった。
『うる星やつら』のアニメーター、森山ゆうじと西島克彦による劇場アニメ『プロジェクトA子』は美少女とメカを押し出したアニメの代表だろう。
90年代には『うる星やつら』を意識したOVAシリーズ『天地無用』も現れる。
特にOVAの時代に入るとあからさまにヒロインの画だけで売ろうとする商品も多数出てきた。
深夜流すちょいエロを売りにしたアニメを見慣れた現在の我々からすれば、そこまでえっちでもないんだけどね。
えーと。
まとめとしては。
アニメ『うる星やつら』昭和版は造る側、見る側ともにテレビアニメでこんなマニアックな一部ウケのもの放送していいんかいと言う気分を楽しんでいた。
若いスタッフが個性を出して、それを視聴者も応援した。
そういった若いパワーが全編に溢れてるのだ。
なので。
『うる星やつら』は話だけリメイクしても、その当時のノリまでは再現できない。
故に令和リメイクはなかなか難しいだろうな、と思いながら見てますよ。
とゆートコロかな。
『うる星やつら』の劇場版や『ビューティフルドリーマー』に関してはまだ語り足りないのだが、またいずれ。
ではでは。
くろねこ教授でした。
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