第7話 小説『悪童日記』
どーも。
くろねこ教授です。
「フハハハハッ。
吾輩が貴様らにピッタリな書を紹介してやろう」
みたいな雰囲気でよろしくです。
いや、つまりまだコミックとアニメしか語って無いので、
別方向的なモノも語っておかないと薄すぎるかな的ななんかアレで、
多少いろんな小説にも目を通してるぜ的なアピール。
『死物語』の感想書こうと思っていたのだけれど、
今回は『悪童日記』です。
書名:悪童日記
作者:アゴタ・クリストフ
概要:戦火から逃れ“ぼくら”はおばあちゃんの家にやってくる。小さな町の人々はおばあちゃんを“魔女”と呼ぶ。おばあちゃんは“ぼくら”を“牝犬の子”と呼ぶ。
割と有名な小説だったりするので知ってる方は知ってるかと。
カクヨムユーザーな方とは馴染みが薄いかなと思って取り上げて見ました。
いろんなところで紹介されてる小説なのですが、
それだけ読むとすげーマジメな戦争下で起こる人々の悲劇を描いた問題作、
という印象になってしまいます。
でもこれメッチャ面白いです。
ユーモア、ブラックユーモアかもしれませんが、にも富んでいますしアイロニーも効いてる。
主役の双子はウルトラかっけえし、隣の家の兎っ子はキュートです。
おばあちゃんも良い味だしてるよな。
俺はラノベしか読まん!と断言してる人でも夢中になれる魅力が詰まってると思うのです。
なんせ、おばあちゃん魔女だし。
それに一人称が“ぼくら”と言う時点で既に普通の小説では無いです。
都会から田舎町へ母親に連れられてきた双子。
母親は去ってしまい彼らは取り残される。
おばあちゃんには何かとぶたれ、町の人々にも罵られる。
彼等は自分達を鍛える事を決意。
お互いの身体に平手打ちを拳骨を加え合う。
精神を鍛える為にお互いを罵倒。
ついには街の人に何を言われようと動じなくなる二人。
しかし、まだ思い出すと涙があふれてしまう言葉が有る。
「私の愛しい子!最愛の子!大切な、可愛い赤ちゃん!」
この言葉でも精神が動じなくなるため練習を重ねる双子。
いく度も繰り返しその言葉を重ねる。
その意味は薄れ、言葉がもたらす痛みも和らぐ。
隣の家には全く動こうとしない、一日中庭を眺める夫人が住んでいる。
その娘は盗めるものは何でも盗む。
双子の家の果実や卵を取ろうとする彼女を追い払う双子。
「あたしはね、乞食をするの。盗むの。そして遊ぶの。」
双子たちはカミソリを持ち歩き靴下に小石を詰めて武器を拵える。
彼等より大きい子供も双子を見れば逃げ出すようになっていく。
という感じで展開します。
ドンドン危険度を増す双子たち。
街の男の子から“兎っ子”を助けるシーンとかはやっぱ胸躍らせるよな。
だけどな・・・。
力を増す双子たち。
酒場で芸を披露し、喝采を浴び酒や煙草にも慣れていく。
兵士と言葉を交わし、森から不発弾を手に入れる。
司祭の弱みを握り、小銭を手に入れる双子。
さらにはその女中を・・・。
やがて母親との再会を果たす双子
彼等の選択は。
残酷なシーンや性的シーンも遠慮ないので苦手な人には勧められません。
ただし、作者の歪んだ欲求がにじみ出てるようなエロでは全くないです。
なんかあるじゃないですか。
作者の暗黒面を引きずり出して臓物を擦り付けるようなやべえ残酷シーンとかエロシーン。
いやまあ、くろの小説の中にも割とそういうの混じってますし、それはそれで創作の魅力ではあると思うし、くろは好きなのですよ。
ただ『悪童日記』のはそう言うのと一線を画すのです。
作品は“ぼくら”が書きつけてる日記という体裁を取ります。
一人称は“ぼくら”でそれ以外の視点は入りません。
同時に“ぼくら”の想い、感情の動きも排除されています。
日記はルールを決めてノートに書かれています。
たとえば「おばあちゃんは魔女に似ている」と書くことは禁じられてる。しかし、「人びとはおばあちゃんを〈魔女〉と呼ぶ」と書くことは許されている。
ぼくらは「ぼくらはクルミの実をたくさん食べる」とは書くだろうが、「ぼくらはクルミの実が好きだ」とは書くまい。「好き」という語は精確さと客観性に欠けていて、確かな語ではないからだ。
その文章で哀しいシーンと思うなら読み手が哀しいと思っているのです。
いいじゃんと思うなら読み手がいいじゃんと思っている。
尊いと思うなら読み手が尊いと思っている。
読み手の感情を操ろうとしていない。
評者によっては『白い文体』と評したりもする文章。
それだけでは普通、味気なくて読み進めるのが辛い物なのですがスルスルと読めてしまう。
カクヨムで書き手を目指す人にも参考になると思うのですよ。
一般的な小説の書き方では勿論無いです。
そう考えると『悪童日記』はやはり異形の小説ですね。
『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』
一応三部作と言う事になっていますが、基本『悪童日記』だけで完成しています。
『ふたりの証拠』、『第三の嘘』は蛇足とは言いませんが、別の作品という見方が正しい気がしますね。
叙述ミステリーみたいになってるし。
なにも気にせず『悪童日記』だけ読むのがオススメ。
それが一番面白いと思うんだよな。
どうしても更に読みたい人だけ読み進めればいい。
という事で『悪童日記』でした。
ではでは。
くろねこ教授、次回は多分近況報告。
早川書房『悪童日記』堀茂樹訳より一部文章を転載、紹介しました。
お礼を申し上げます。
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