389話 ミスリルのインゴット
ミルキーに、俺たち『悠久の風』に何があったか伝えている。
まずは、ダンジョンの最深部から無事に戻ってきたという話をした。
「はえー。お前ら、凄えパーティだったんだな」
ミルキーが目を丸くして驚いている。
「おう。見直したか?」
「ああ。そんなパーティに入れば、ミナのレベルアップの早さも理解できるぜ」
ミルキーが納得の表情を浮かべている。
「ミナもいろいろと大活躍だったよ。魔物との戦闘はもちろん、武具のメンテナンスもしてもらったし」
「えっへん、なのです」
「ふふん。ミナはアタシ自慢の従姉妹だかんな」
ミナとミルキーが揃って胸を張る。
従姉妹というだけあって、2人は似ているところがあるな。
髪は赤系のショートで、背が低くて、胸が控えめで、結構ガサツな性格をしている。
ミルキーの髪はさらに短く、背はより低く、胸はより控えめで、髪のボサボサっぷりも上だ。
ミナという年上の従姉妹がいて、さぞかし自慢に思っていることだろう。
「ミナが『聖鍛冶師』になれた理由はわかった。確かにミナとアタシが力を合わせれば、お前たち『悠久の風』の武具を一新することもできるだろう。けどよ、他の問題もあるんじゃねぇか?」
「他の問題と言うと?」
「決まってんじゃねぇか。材料と鍛冶費だよ。前にも話したが、お前たちの今の武具はオリハルコン製なんだろ? それと同等か少し上くらいの武具を作るだけでも、相当な量のオリハルコンが要る。性能が明確に上の武具を作ろうってんなら、それこそミスリルやアダマンタイトが山のように必要になる。安く見積もっても金貨数千枚単位で掛かるぜ?」
「うむ……。その通りだ」
ミルキーの指摘は正しい。
材料をこれから手配するのであれば、それぐらいの費用は掛かるだろう。
だが、今回の場合は問題ない。
「ほら、これを見てくれ」
俺は『ストレージ』からミスリルのインゴットを取り出す。
「これは?」
「さっき話していたエルカ迷宮の財宝部屋で手に入れたものだ。これを使えば、新しい装備一式が作れるはずだ」
「ちょ、ちょっと待て! そんな貴重な素材を持ち歩いてたのか!?」
「別に騒ぐほどのことじゃない。むしろ、俺が持っているのが一番安全だ。冒険者ギルドや宿屋に預けるという手もあるが、俺は冒険者だからな。冒険者ギルドや宿に置いておくよりも、俺が直接持ち歩いた方がずっと安心できる」
「そ、そりゃあ、そうかもしれねーけどよぉ……」
「それに、この素材は俺だけの物ではない。パーティの持ち物である以上、リーダーである俺が管理すべきだ。違うかな?」
「な、なるほど。上級パーティのリーダーってのは、そこまでの覚悟が要るもんなのか」
「ま、そういうことだ」
俺はドヤ顔で答える。
実際には『ストレージ』の中に仕舞っているので、盗まれる心配は皆無だがな。
俺からミスリルのインゴットや多額の金貨を奪うならば、まずは俺をボコボコにして、その上で”命が惜しけりゃ出すものを出せ”と脅すしかない。
だが、今やAランク冒険者になった俺に対してそんなことをできる者はそうそういない。
パーティメンバー兼ハーレムメンバーには、BランクやCランクがゴロゴロしているしな。
レアアイテムは、下手に冒険者ギルドや宿屋に預けるよりも、俺が持っていた方が安心できることは間違いない。
さて。
武具の新調に向けて、人手と材料の問題は解決できた。
残るは、鍛冶費用の話だな。
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