288話 エルカ迷宮の攻略に向けて
オリハルコンの入手法を模索している。
ユヅキの考えを聞いてみよう。
「僕たちは、まだエルカ迷宮の1階層と2階層しか探索していないでしょ? より深い階層に行けば、もっと強い魔物がいるはずだから、そこでオリハルコンが手に入る可能性だって十分にあるんじゃない?」
「なるほど……。確かに、そうだな」
さすがはユヅキだ。
この世界における冒険者としては、彼女の方が俺よりも先輩である。
俺にはMSCでの知識と経験があるが、この世界の仕組みはそれとは少し異なる点もある。
彼女の意見を参考にしていこう。
「そうと決まれば、さっそく行こうぜ!」
リンが張り切って声を上げる。
「迷宮ですか。話には聞いたことがありますが、入るのは初めてですわね」
「……ん。ティータはある。アルフヘイムの近くにも迷宮があったから……」
「俺もあるぜ! 黒狼団は、迷宮で冒険者を待ち伏せして襲うこともしていたからな! ……むぐっ!!」
グレイスがうっかり口を滑らせる。
俺は慌てて彼女の口を手で塞ぐが、時すでに遅し。
「黒狼団だって? どこかで聞いたことがあるような……」
ミルキーがそう反応する。
黒狼団はそれなりに有名な盗賊団ではあるが、活動拠点はここから遠い。
名前を聞いて即座に思い出せるほどではないようだ。
「いや、なんでもないんだ」
俺はグレイスの口を塞いだまま、ミルキーに答える。
グレイスが黒狼団の一員であったことは、シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リン、ティータ、ローズの6人は把握している。
俺の苛烈な尋問によりそれなりの罰を受けたことを知っているし、絶技により女として陥落したことも知っている。
彼女たちがグレイスの過去の罪に対してとやかく言うことはない。
だが、他の者は別だ。
エメラダやミルキーにグレイスの罪がバレたら、少し面倒なことになりかねない。
最終的には、俺のBランク冒険者としての力を発揮すればどうとでもなる。
エメラダを奴隷商から購入したときのようにな。
だが、それは本当に最後の手段にしておきたい。
俺は、彼女たちとは仲良くやっていきたいと思っている。
奴隷商が泣きそうな顔をしていたのはザマアと思ったが、エメラダやミルキーを泣かせることは避けたい。
「……そうか? まあ、どっかの冒険者パーティの名前か何かだったかな。気にしないでおくさ」
ミルキーがあっさり引き下がる。
「助かるよ」
「いや、いいってこった」
彼女は笑顔を見せる。
俺が隠していることにも勘づいているのかもしれない。
深入りしないでいてくれてありがたいな。
こうして、俺たち『悠久の風』は、エルカ迷宮の攻略に向けて準備を進めることになったのだった。
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