284話 ミナの従姉妹ミルキー

 翌朝。

 さっそく、ミナの鍛冶場に向かう。

 同行者は俺、エメラダ、ミナ、シルヴィの4人だ。


「ミナの従姉妹さんは、どんな人なんだ?」


「ええっと。名前はミルキーっていうのです。ちょっとあれですけど、仕事は丁寧で信頼できる人なのです」


「ふむ。まあ、ミナが言うんだ。信頼に値する人物なんだろう。紹介を頼むぞ」


「はいなのです」


 ミナの先導で、俺たちは彼女の鍛冶場へと向かう。

 到着した先は、町の裏通りにある小さな建物。


「ミルキーさん!」


「あいよー!」


 建物の扉を開けるなり、中にいた少女が返事をした。

 年齢は15歳くらいだろうか。

 褐色肌で、ショートカットの少女だ。


「おう、ミナじゃないか。ん、後ろの連中は誰だい?」


「こちらの人が、『悠久の風』の人たちなのです。リーダーのコウタくん、新加入のエメラダさん、そして古株のシルヴィさんなのです」


「初めまして。『悠久の風』のリーダーのコウタだ。今日はよろしく頼む」


 俺は自己紹介する。


「アタシはミルキーだよ。ミナの従姉妹で鍛冶職人をやってるよ。よろしくね」


「ああ。よろしくな」


「それで、本日はどのような用件だい?」


「ええと、この人の武器を見繕って欲しいのです」


 ミナが、横にいるエメラダを紹介する。


「へえ。あんたは確か、エメラダの工房の……。厄介な連中に金を借りていたと聞いたが……。大丈夫だったのか?」


「……えっと、はい。こちらの主様のおかげで……」


「そうだな。ちょっとしたゴタゴタはあったが、概ね解決済みだ。ただ、今後は彼女にも『悠久の風』で活動してもらうことになった。だから、武器が欲しいんだ」


「そういうことだったら任せてくれよ! ミナにはいい鍛冶場を借りさせてもらっているからな。お代は結構だ」


「いや、さすがにそれは悪い。ちゃんとした値段で買い取らせてくれ」


「いーや! ミナの紹介とあれば、そういうわけにはいかねえな!」


 ミルキーが強硬に主張する。

 見た目はミナと同年代の少女なのだが、中身は職人気質の頑固親父といった感じか。


「ミルキーさん。お金のやりくりは大丈夫なのです?」


 ミナがそう問う。

 場所を提供している彼女としては、当然そこが心配なところだろう。

 ミルキーが無茶なサービスをして赤字経営に陥ったら、鍛冶場の存続に関わってくる。


「ああ。うちの工房は、お客さんからの評判がいいからな。多少高く値付けても、すぐに売れちまうんだよ。ミナが築いてきた信用は壊していないぜ」


 なるほど。

 商売繁盛しているようで何よりだ。


「なら、お言葉に甘えたらどうなのです? コウタくん。ミルキーさんの気持ちは嬉しいものなのです」


「そうだな。それじゃあ、お願いしようか」


 どれほど質のいい武器をつくってくれるのだろうか。

 お手並みを拝見させてもらうことにしよう。

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