279話 わたしはご主人様の味方です

 宿屋に到着した。

 俺とエメラダ。

 シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リン、ティータ、ローズ、グレイス。

 みんなで情報共有を進めていく。


「……ということがあったんだ」


 俺はざっくりと経緯を説明した。


「主様の仰る通りなんです。まさかあんなことになるなんて……」


 エメラダはショックを隠せないでいた。

 無理もない。

 いきなり奴隷として売られ、奴隷紋を刻まれてしまったのだ。


「でもさ、なんでコウタがエメラダちゃんを買ったわけ?」


 ユヅキが疑問を口にする。


「……そうだね。コウタちゃんはそういうのが好きだったの……?」


「言われてみましたら、最初のお仲間であるシルヴィさんも奴隷ですものね。コウタ殿の嗜好が透けて見えるというもの」


 ティータとローズがそんなことを言う。


「違う! 誤解を招く言い方をするんじゃない!」


 俺は必死に弁明するが……。


「そうだったのですか。確かに、主様は大変興奮しておられました。いきり立ったアレをあたしの大切なところに……」


「おいおいおい!」


 エメラダの暴露話が止まらない。


「え? マジか? コウタっち……」


「最低なのですっ! 奴隷身分で逆らえない女の子にそんなことをするなんて……」


「さすがにこれは擁護できねえな。盗賊だった俺の尋問のときとはワケが違うだろ」


 リン、ミナ、グレイスがドン引きしていた。


「ち、違うんだ。これには深い事情があってだな……」


 いくら俺でも、逆らえない女性に無理やり迫るほどの鬼畜ではない。

 たまには無理やりもいいなとか、断じて思っていない!

 ポン。

 焦る俺の肩を、シルヴィが叩いた。


「大丈夫です。ご主人様」


「えっ? シルヴィ……」


「わたしはご主人様の味方です」


「ありがとう……。俺を信じてくれるのはシルヴィだけだ……」


 俺はシルヴィの胸に顔を埋めた。

 最初期から共に過ごしてきた彼女は、やはり特別な存在だ。


「たとえご主人様が女性に乱暴するような人でも、性欲を持て余した変態であっても、どんなにクズでもゴミでもカスでもゲロでもドブネズミでもクソ虫でも、愛しています」


「…………」


 シルヴィの愛が重い。

 どんなことがあろうと俺の味方をしてくれるというのは嬉しい。

 だが……。


「だから違うんだって! なあ、エメラダも説明してくれよ」


「はい。主様はあたしを購入される際、まずはあたしの服を剥ぎ取られました。そして、あたしが本当に処女か確認すると仰って……」


「おいおいおいおい!」


 そこの説明じゃねえ。

 ユヅキやミナたちの視線がさらに冷たいものになっていく。

 結局、何とかみんなに納得してもらうまで、1時間以上の弁明を要したのだった。

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