176話 ローズが加入

「あの、よろしいでしょうか」


 そう声を上げたのは、ローズだ。

 そういえば、彼女はなぜこの場にいるのだろうか?

 ブラックワイバーン戦では俺たち『悠久の風』とともに戦ったものの、あれはあくまで臨時の協力体制だ。

 いつの間にかちゃっかりと『悠久の風』に加入しているティータとは少し扱いが異なる。


「どうした? 我が最愛の娘ローズよ」


 クラウスが尋ねる。


「はい。わたくしの今後についての話ですわ」


 ローズがそう切り出す。

 彼女の今後か。


「俺と結婚してくれるのだろう? 既に関係貴族家や、各組織の上層部には伝わっているはずだ。そうだな? クラウスにギルマスよ」


「ああ」


「はい。その通りです」


 クラウスとギルマスがそう同意する。


「コウタ殿は、わたくしにどのような奥方になってほしいとお思いですか?」


 ローズが聞いてくる。


「どんなと言われてもな」


 俺は考える。

 しかし、考えたところですぐに答えは出ない。


「強いて言えば、一緒にいて楽しい人、かな」


「…………」


 ローズが黙った。


「どうかしたか?」


「いえ……。少々、想定外のお答えでしたので」


「そうなのか? 俺にとってはそれが一番重要なんだ」


 逆に、ローズはどんな答えを想定していたのだろう?

 ええと……。

 例えば、俺がもっと冒険者として成り上がるためのパーティメンバーだとか、貴族家を守るしっかりとした奥さんだとかだろうか。

 改めて考えてみれば、そういった答えもありだったな。


 何だよ、一緒にいて楽しい人って。

 学生の恋愛ごっこじゃないんだぞ。

 ローズやクラウスに呆れられてしまったか?


「ふむ。コウタ殿らしいと言えばそれまでだが」


 クラウスはそんなふうに呟く。

 ローズは……、なぜか微笑んでいた。


「分かりました。では、これからは楽しく、時に厳しく、お互いを支え合うパートナーとして頑張りましょう」


「ああ、よろしく頼む」


 俺はローズの手を取る。

 彼女はその手を握り返してきた。


「……ということですので、わたくしも『悠久の風』のパーティメンバーに加えてくださいまし」


「え? ああ、そういう話だったか」


 言われてみればそうか。

 ローズがパーティメンバーとして俺たちと同行するか、貴族家を支える奥さんとして町で待機するか。

 その判断のためにも、俺の意向を聞きたいということだったな。


「分かった。歓迎しよう」


 俺は即答する。

 シルヴィやユヅキたちも歓迎の言葉を口にしていく。


「ありがとうございます」


 ローズが頭を下げた。


「では、ギルドとしてもそれで処理しておいてもらえるか」


「はい。直ちに」


 ギルマスが職員に指示を出す。

 これで、『悠久の風』はBランクパーティへと昇格。

 俺の個人ランクもBへ昇格。


 そして、新たな仲間ローズが加わった。

 俺たちの成り上がりと大躍進は、これからも続いていくだろう。

 世界滅亡の危機も、きっと回避してみせるさ。

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