174話 冒険者ギルドで報告を受ける

 ローズとの婚約から数日が経過した。

 俺たち『悠久の風』は、テツザンの冒険者ギルドに来ている。


「よう。来てやったぞ」


「コウタ様、それに皆様。ようこそおいでくださいました」


 受付嬢が出迎えてくれた。


「何か俺たちに連絡事項があると聞いたのだが……」


「はい。こちらへどうぞ」


 彼女に案内され、奥の部屋に入る。

 そこには、ギルドマスターがいた。

 さらに、クラウスもいる。


「やあ、待っていたよ」


 クラウスが笑顔で言った。


「おう。元気そう……でもないか」


 目の下に隈ができていた。

 眠れていないようだ。


「まあな。ブラックワイバーン討伐後の処理や、魔物の残党狩りなどで忙しくてね」


「大変そうだな」


「まったくだよ。今回君たちを呼んだのも、その件だ。まあ報告だけだがね」


「聞かせてくれ」


 俺はそう言って、先を促す。


「ブラックワイバーンの死骸だが、解体したところ魔石以外の部位は概ね無事だった。そこで、素材の大部分が君たちのものとなる。我々領軍や一般冒険者も、ある程度ダメージは与えていたからその分の報酬はいただくがな」


「それは当然のことだな。……ところで、ブラックワイバーンの素材は市場価値が高いのだったか?」


 MSCではそれなりの高値で売れたような覚えがある。

 具体的な値段までは覚えていないが。


「ああ。ブラックワイバーンの肉は高級食材だし、皮や骨、牙なんかは武器防具の材料にもなる。鱗一枚の値段だけで、金貨数枚はくだらないだろう」


「そんなにか?」


「まあな。早めに現金化しておいた方が無難だと思うぞ。商人や冒険者が君へ個別に交渉してきたら、面倒だろう? よければこっちで売却しておくが」


「そうだな。そうしてもらおう。よろしく頼む」


 俺たち『悠久の風』の本業は冒険者だ。

 もちろん金は多いほどいいのだが、商人との駆け引きに労力を割くのは避けたい。


「そして、もう一つ。ブラックワイバーンの角についてなんだが」


「あの黒い角か?」


「ああ。あれは最高クラスの武器の材料に使われる代物だ。特に剣は凄まじくいい出来になると聞く」


「そうなのか」


 確かに、MSCではそうだったような気もするな。

 最高クラスと言われるとやや大げさな気もするが。


「なんでも、オリハルコンの防具すら切り裂けるとかなんとか……。正直、私も見たことがないから分からないんだが」


「ふむ。それなら、角だけは売らずに死守しておくか」


「それがいいだろう。他の部位はこちらで適切な額で売っておく」


「ありがとう。それで? 本題はこれだけじゃないだろう?」


「察しがいいな。実は、ドラゴンスレイヤーの称号のことだ」


 クラウスが真剣な表情で言う。


「称号? 俺にもらえるのか?」


 MSCでは、特定の条件を満たせばシステム上の称号が与えられる。

 ドラゴンスレイヤーの称号の場合は、竜種の通算討伐数、対竜種の各戦闘における活躍を合算した通算貢献度、そして冒険者ギルドや民間人、貴族家にその活躍が強く広く認知されることなどが条件である。

 子爵家の当主であるクラウスが『冒険者コウタはドラゴンスレイヤーの称号に値する人物である』と認知し、それを関係者と共有すれば、俺がシステム上の称号を獲得できる可能性が高まることだろう。


 はたして、俺は見事ドラゴンスレイヤーの称号を得ることができるのか。

 期待したいところだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る