164話 vsビッグベアー

 俺たち『悠久の風』は、先遣隊の一部として森へ魔物退治に繰り出した。

 ティータやローズが、一時的にパーティに加入している。


「ここが魔物の目撃情報があった場所です」


 領軍の兵士が説明をする。


「よし。各隊で、早速捜索を始めてくれ」


 クラウスが言う。

 先遣隊がパーティや小隊ごとに分けられ、かなりの広範囲にわたって捜索が行われていく。


「確かに、魔物の数が増えているようだな」


「そうだね。……せいっ!」


 俺やユヅキ、それに他のメンバーの活躍により、小型の魔物を順調に討伐していく。

 数は多いが、脅威というほどでもない。

 他のパーティや小隊も問題なく狩りを行っているはずだ。


「この調子なら何事もなく終わりそうだな」


「油断大敵なのです。クラウスさんの話では、魔物の親玉クラスがいるはずなのです」


「そうですわね。気を引き締めて参りましょう」


 ミナとローズがそう言う。

 俺たちは周囲を警戒しながら、さらに奥地へ向かって進んでいく。

 小型の魔物を何度か討伐した。

 そのまましばらく歩いていると……。


「ご主人様! いました! ビッグベアーです!」


 シルヴィが叫んだ。

 彼女が指差している方向に視線を向けると、そこには巨大な熊のような生物がいた。


「グオオオオッ!!」


 俺たちの姿を見つけた瞬間、魔物が襲いかかってきた。


「いきなりか!?」


 俺は驚きつつも、素早く剣を抜く。

 そして、振り下ろされた爪による攻撃を、ギリギリのところで防いだ。

 ギン!!

 甲高い音が鳴り響く。


「ガアアッ!!」


 魔物はそのまま力任せに押してくる。


「コウタ! 下がって! 僕の土魔法を使う!」


 ユヅキが声をかけてくる。

 俺はすぐさま後ろに下がった。


「ロックウォール!」


 直後、魔物の足元から岩の壁がせり上がる。


「ギャウンッ!!!」


 魔物は大きな悲鳴をあげながら、空中に浮かび上がった。


「今だ!」


 俺の声と共に、全員の攻撃が繰り出される。


「えいっ!」


「はあっ! なのです!」


「どりゃあ!」


 シルヴィ、ミナ、リンの攻撃がビッグベアーにヒットする。


「ウッドランス!」


「セイントアロー!」


 ティータが放った木魔法、そしてローズが放った弓矢も、魔物を貫くことに成功した。


「これで終わりだ! スーパーラッシュ!!」


 そして、俺の斬撃によって、ビッグベアーは完全に息絶えた。


「ふうっ。なんとかなったようだな」


 俺は額の汗を拭いながら言った。


「さすがは優勝者のコウタ殿が率いる冒険者パーティですわ。見事な戦いぶりでした」


 ローズが拍手をしながらそう言う。


「まあな。これくらいなら朝飯前だよ」


「……少しくらい謙遜した方がいいと思うけど……」


 ティータが冷静に突っ込んでくる。


「いや、本当のことだから」


 俺がそう返すと、他のメンバーたちも笑っていた。

 この魔物は結構なサイズ感だった。

 残された魔石もなかなかだ。

 親玉クラスだと考えていいだろう。

 クラウスからの報酬金にも期待できるかもしれないな。

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