145話 一回戦

 武闘大会が開幕した。

 いきなり俺の出番だ。

 俺はステージの中央付近に向かう。

 対戦相手も同様だ。


「「おおおおぉぉ!!!」」


 観客たちからそんな歓声が聞こえる。

 第一試合だし、相当に注目されているようだ。

 相手は前回の準優勝者らしいしな。


「両者向かい合って構えてぇ~。レディィイ、ファイッ!!」


 司会のデボラの掛け声とともにゴングが鳴る。


「先手必勝だ! せいっ!」


 俺は相手に駆け寄り、拳を突き出す。

 だが、あっさりかわされた。


「甘いですね」


 そう言って相手が攻撃を仕掛けてくる。


「くそ……」


 俺は相手の攻撃を必死にガードする。

 がんばって反撃するが、ことごとく躱されてしまう。


「なかなか悪くない動きですね……。初出場でこれは有望です」


 そう言いながら攻撃を続けてくる。


「ぐっ、まだまだっ!」


 俺はなんとか耐えているものの、防戦一方だ。

 このままでは負ける。

 どうすればいいんだっ!

 その時だった。


「がんばれ、コウタっち!」


 リンの声援が聞こえてきた。


「まだ終わっていないのです!」


 ミナも続けて言ってくる。

 そうだ。

 諦めたらそこで終わりだ。


 俺はリンたちとの鍛錬を思い返す。

 そして、ある作戦を思いつく。

 俺は相手に隙ができる瞬間を待った。


「これで終わりです!!」


 相手が大きめに振りかぶった攻撃を繰り出す。

 ここだ!


「はあっ!」


 俺は相手の一撃をかわし、カウンターを仕掛ける。


「なにっ!?」


 相手は慌てて防御する。

 カウンターの一撃は防がれてしまったが、体勢を崩すことには成功した。

 一気に畳み掛けるぞ!


「『気功解放』!」


 身体強化を使い、全力で相手を殴る。

 ドカッ!!!

 鈍い音がした。

 やったか!?


「ふぅ、危ないところでしたが、直撃は免れましたよ。まさか隠し球があったとは驚きです」


 相手はまだ元気だ。

 多少のダメージは与えられているが、戦闘不能というほどではない。


「私の勝ちのようですね。悪く思わないでください」


 彼はそう言い、とどめを刺そうとしてくる。

 力及ばなかったか。

 ……いや。


「ご主人様、がんばってください!」


 シルヴィの声が聞こえた。


「コウター! ファイトだよーっ!」


 ユヅキも叫んでいる。

 彼女たちの応援を無視するわけにはいかない。

 俺は最後の力で、渾身の突きを放つ。


「無駄ですよ!」


 相手は避けようとするが……。


「うおおおおぉっ!!!」


 俺は限界を超えて気功を解放する。

 そして俺の拳は、鈍い音と共に見事にヒットした。


「ぐほっ!!」


 相手が倒れる。

 審判がカウントをとるが、起き上がってこない。


「勝者、コウタ選手!!」


 司会のデボラがそう宣言する。


「「うおおおぉぉ!!」」


 観客たちが歓声を上げる。

 よし!

 俺の勝ちだ!


「やるじゃねえか!」


「すごいよ!」


「次も頑張れよ!」


 観客席からそんな声がかけられた。


「おう! 次も期待しておけよ!」


 俺は精一杯の笑顔でそう答えた。

 応援してくれたシルヴィたちにも、しっかりとお礼を言っておかないとな。

 そして、二回戦以降もがんばっていこう。

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