73話 オリハルコンの武器の作成

 エルカ迷宮で追加のオリハルコンを入手してから、数日が経過した。

 この数日間、俺、シルヴィ、ユヅキはエルカ草原で軽く狩りをしている。

 リンは、料亭ハーゼでコンテストに向けた練習や研究をしつつ、たまに俺たちの狩りに同行している。


 そして、ミナだがーー。


「みなさん、ありがとうなのです。無事に、領主さんにオリハルコンの武器を納品できたのです」


 ミナがそう言う。

 俺たち『悠久の風』は、ミナの鍛冶場に集まっているところだ。


「それはよかった。あのオリハルコンで足りたんだな」


 ミナがオリハルコンを得たのは、合計3回。

 領主から提供されたもの。

 俺のミッション報酬から渡されたもの。

 そして、つい数日前にゴーレムからドロップしたものである。


「よっしゃ! 次は、あたいのリトルブラックタイガーの番だな!」


 リンがそう言う。


「ボクももちろん手伝うのです。ですが、その前に……」


「その前に?」


「いくらか余ったオリハルコンがあるので、みんなの武器をつくらせてもらいたいのです」


 ミナがそう言う。


「それはいいね。ミナさんの腕なら、きっと素敵な武器になりそう」


「ご主人様の名声を高めるため、わたしにもより強い武器をいただけるとありがたいです!」


 ユヅキとシルヴィがそう言う。


「期待したいところだな。武器の作成費についてだが……」


「お代は、今回は要らないのです。オリハルコンを融通してもらったお礼です」


 『悠久の風』における報酬分配は、基本は等分だ。

 オリハルコンを得た際には、ミナにオリハルコンを提供する代わりに、彼女へ分配する金銭報酬は差し引いておいた。

 しかしそれを考慮しても、ややミナの取り分が多めだったという事実はある。

 俺たちはあまり細かいことをうるさく言わなかったが、ミナとしてはしっかりと自覚していたらしい。


「それはありがたい。しかし、ムリしていないか?」


「問題ないのです。領主さんからもらった報酬で潤っているのです」


 領主からの指名依頼だけあって、報酬もよかったわけか。


「へへっ。ミナっちがつくってくれた武器があれば、リトルブラックタイガー狩りも効率が上がりそうだな!」


「任せてなのです。腕によりをかけます。あと数日だけ待ってほしいのです」


 鍛冶にはそこそこの時間がかかる。

 武器ができるまでは、またエルカ草原あたりで軽く狩りをしておくことにするか。


 今の俺たちなら、俺、シルヴィ、ユヅキ、リンの4人でもリトルブラックタイガーを狩れるかもしれないが。

 しかし、やはりリスクのある迷宮探索は万全の状態で臨みたい。

 リンの料理コンテストまではまだ少し日があるし、ここは武器の完成を待つことにしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る