第19話 融合

僕達はホテルにいた。


何故このようなことになってしまったのだろう。

後悔の念が出てくる。


僕が先にシャワーを浴び、

その後、リョウコがシャワーを浴びている。


普段なら自分がシャワーを浴びている時に

財布を盗まれ女が消えてしまうのでは無いか心配になるが

この時は何故かならなかった。


リョウコなら大丈夫という正常性バイアスだろうか。


それとも性欲に溺れてしまっているのだろうか。


シャワーの音が聞こえてくる、複雑な心境だ。

自分は何をしているのだろうか。


やはりこのまま帰った方が良いのでは無いか、こんな事は良くない。

と反省しているかのように考えて、いるかいないか分からない神様に許しを得ようとしてみる。


そうこうしているうちにシャワー音が鳴り止み、

ドアを開ける音が聞こえる。


その後に聞こえるドライヤーの音。

髪を乾かしている姿を想像してみる。

足音が聞こえ1歩ずつ自分に近づいてくる。

足音の方向に目を向けるとタオルで胸から下を隠したリョウコが立っていた。


そして、目と目が合うなり、僕たちは直ぐにキスをした。


動物的感情が、まるでダムを開放したかのように溢れ出した。


真っ白な歯が僕の前歯に時々カチカチあたる。

あの憧れの綺麗な歯をそばで感じている。


そして、僕は今夜ジャージ下の神秘が自分の物になる事に高揚した。


あの時の憧れが目の前に訪れた時、

温かさと滑らかさと柔らかさに触れた時、僕は勝利を感じた。


リョウコがいつもつけている香水がまだほんのり香った。

そこに交差するように“リョウコの香り”が現れて

その天然物と人工物の双方の交わりに挟まれた僕はさらに興奮する。


僕は味わうように融合し、吸収され満たされていく。


今この状態は、僕と言えるのか、リョウコと言えるのか。


何と表現をするのか。


身体、精神全体が互いに全力で、

命がけで向き合っている姿を天井の鏡越しに僕は興奮しながらも時々冷静に見ていた。


気づいたら、夜が明け、隣を見るとリョウコはまだ寝ていた。

時間は午前11時を過ぎていた。


僕は、勝利の後の充実に浸っていたが急に侵入思考が襲ってきた。


昨日、ゴムをつけたよな。


破れていないよな。


ゴムを探す。


全てのゴミ箱をあさる。


大量の使用済みのゴムが破損していない事を確認し安堵した。


しかし、確認した直ぐそばから、また確認したくなってしまう。


もしかしたら、破れていないか。

でも、この繰り返しをしても意味が無い事を既に知っている僕は、

途中で止めて、

全てトイレに流した後で寝ているリョウコにキスをした。


リョウコが起きてから、2回して僕たちはホテルを出た。


自宅に帰ると1つメールが来ていた。


「あんなに大切に抱かれたのは生まれて初めて」

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