Devil's piece
@siriki
とある歴史の1ページ
これは、まだこの世界に『国でない
世界は生物に、二つの力を与えた。
神族には神力を。
その他の種族には魔力を。
異なる力を持つ者たちは、住む次元を神域と魔域とに分け、互いに交わらぬよう努めた。
そうするうち、魔力を操る種族の多くが神族の存在を忘れ、あるいは彼らを崇め、名の通り神格化してしまった。
魔力は纏うことで肉体をより強靭にする。だが神力と違い、魔力そのものはそれ以上に特別な力を持たない。そこで発明されたのが『魔法』だった。
魔法は魔力を素とし特別な力を発揮する。
火を吹く魔法。
氷を扱う魔法。
植物を操る魔法。
使用できる魔法は個々の魔力の『色』に依存するが、魔法の発明によりそれまで以上に魔力の総量、質が重要視され、人々は魔力を鍛えんとした。結果、魔力は短い期間で大きな飛躍を遂げる。またそれに伴い、さまざまな魔法が発明、発見されて行った。
そんな折、魔域に一人の男が生まれ落ちる。のちの歴史で、『愚者』と、そう呼ばれる男である。
彼は集めた。世界中に散らばる神々の情報、その失われた記憶。そして、彼らを魔域に堕す方法。
彼が何を想いそうしたのか、なぜ神の存在を信じたのか、その一切の記録は残っていない。
ともあれ、彼は一体の神族の召喚に成功する。
神の名は『邪神ゼファルニア』。
最上位の神にして、神族唯一の神を喰らう神。
ゼファルニアは八つの力を持っていた。神とはいえ本来持てる神力は一体につき一種類。必然的に使用できる力も一つだけのはずであったが、ゼファルニアは他の神を喰らいその神力を取り込んでいた。それら
魔域に召喚されたゼファルニアは魔力を持つ者を喰らい始めた。
より強い魔力を、より強い魔力を。
ゼファルニアがたった一年の間に絶滅させたとされる種族は三十二種。同時に多くの技術と魔法が失われたが、その間行われたあらゆる抵抗は、抵抗と呼ぶにはあまりに虚しく散った。
魔域に残ったのは最も魔力の低い種族である『
だが幸運なことに、『
『賢者』と呼ばれたその魔法使いは、他の種族が歯も立たなかったゼファルニアに対抗できるほどの魔力を持っており、更には稀有な魔法に適性を持つ数人の仲間を連れていた。
『賢者』という魔域最強の存在がなぜ最も魔力の低い種族の中に生まれたのか、魔力の高い他種族が蹂躙されている中、彼はなぜ邪神に狙われなかったのか。その記録もまた、一切残されていない。
ゼファルニアが召喚されて一年余が経った頃、賢者とその一行は邪神討伐に名乗りを上げた。
彼らは四つの魔法を使用した。強大な力を持つそれらの魔法は前例のない物で、賢者たちが対邪神用に作り出した物なのではないかと伝えられている。
賢者たちはゼファルニアを追い詰めた。
だがとどめを刺そうと言うその時、ゼルファニアは八つの力の一つ『封印』で、自身を封印した。
封印。
腐敗。
転化。
枯渇。
肥大。
蘇生。
紅焔。
そして、不死。
八つの力はバラバラになり、それぞれが器に封印され魔域中に散らばった。
その時既に『
だが他種族がほとんど滅ぼされ、『
同時に賢者達は悩んでいた。
先の邪神との戦いで使用した四つの魔法。邪神を封印まで追い込んだその強大な魔法を、果たして後世に残していいのか。この魔法達は、平和な世界で『戦争の負の遺産』となってしまうのではないか。
そこで、彼らは四つの国を作った。
火の国。
水の国。
木の国。
地の国。
それぞれの国の王は、賢者とともに邪神と戦ったものの中から選ばれた。そして、賢者は国王達に一人一つずつ、四つの魔法を託した。当時その魔法を目にした者は数多くいたが、彼らは賢者の願いを汲み、子にその魔法について話すことはなかった。
現代に於いて『
かくして、魔域は四つの『
四つの国は『国でない
名は物を作る。
四つの国の架け橋となるようにと願いが込められたその国は、『ブリッジ』と、そう名付けられた。
そして、平和が戻り、新たな歴史が紡がれ出してから四千年が経った。
ゼファルニアがもたらしたものがあった。邪神の顕現は魔域の者に神の存在を思い出させ、この四千年で少しだけ、魔族と神族との距離が近くなったのだ。
先述の通り、ゼファルニアの力は八つの器に封印された。
神力が込められた器は『神器』と呼ばれる。だが邪の王の神力が込められた器は特に——
『
そして今、八つの『
ある者はそれらを完全に消滅させるために。
ある者はそれらを管理し、邪神の封印が解かれるのを防ぐために。
そしてある者は、邪神を復活させるために。
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