シュ

赤宮朱色あかみやしゅいろはアカの五歳年上の兄であり、大学四年生だ。

大学には通っているものの単位が危ないくらいサボっていてずっと家にいるらしい。


両親にはいい顔をする癖に妹であるアカには

暴力や罵声を浴びせるらしい。

アカも怖くて逆らうことが出来ず、シロに殺害を頼んだらしい。


「頼めないかな?」


「いいよ、貴方が私のことを警察に言って自分の罪もアオに押し付けて逃げる可能性がないわけではないもの。協力する。

シュのことはクロのご飯にしていい?」


「うん...。妹である私にもそういうこと言えるんだね...。」


「引いた?呆れた?」


「嬉しい!」


「え...?」


「私は可愛くて面白いシロに憧れてたの。

犯罪者だって知って、貴方の秘密を知れたって嬉しく思った。貴方は心も強いんだって、

脅した相手にそんな態度ができるほど。

私の憧れたかったシロだって、そう思ったの。」


シロも狂っていればアカも狂っていた。

シロがクロのためと理由をつけて自分の欲望を満たしていたのと変わらず、アカもまた

シロに近づきたいという欲望のために盗聴という犯罪を犯している。


更にアオも狂っている。

アカに恋心を抱き、それを満たすため犯罪に加担している。


シロは初めてわかり合いたいと思った。

自分の気持ちは理解されることがないと思っていた。犯罪者の気持ちなんて。

狂った自分の思考なんて。

でも、認めたうえで嬉しいと言ってくれる人もいた。

アカとアオに自分を知って欲しい。

そう思った。


「アカの家、連れて行って。」


「うん、アオは来る?」


「勿論行く。」




アカの家に着くと、シュが扉を開けた。


「おかえり、空音。アオと...そちらは?」


「白鷺叶絵と申します。空音ちゃんとは友達で

して。」


「あ、そうなのか。いらっしゃいませ。

飲み物は何がいい?」


「ホットミルクで」


「了解したよ。」




「お兄ちゃんはお客様が寝た隙に私を呼び出して暴力を振るうの。」


「そうだろうなって思った。ちゃんと武器だって持ってきてるし、寝る気もないよ。」


自分の妹が部屋で友達と自分を殺す算段をしているとは夢にも思わないシュはホットミルクを持って部屋へ入る。


「はい、どうぞ。」


「ありがとうございます。」


誠実そうなお兄さんなのに。そう思った。



夜、泊まって行くことを許可されたシロとアオはその晩、眠ったフリをしてシュが入ってくるのを待った。


ガチャっと扉が空いた。


シュがアカに手招きをして部屋から出て行く。アカはそれに応じた。


話し声が聞こえ、バタンと倒れる音が聞こえた。


「お...兄ちゃん...!」


アカの声が聞こえ、シロは動き出す。


「アオ、お願い。動画撮っといて。」


「どうして?」


シロが動画を撮って欲しい理由はちゃんとあった。

もし、アカがシロを兄殺しとして警察に通報するような裏切り行為があった場合、動画を見せて経緯を説明すれば罪が軽くなる。

友人の兄殺しと友人を守るための殺人だったら後者のほうが罪になったとしても良い印象になるだろうとも考えていた。


「アカは本当にお前のことを崇拝しているんだぞ?」


「だからこそだよ。」


崇拝する相手が少しでも理想と違うことをした時、人はすぐに裏切るだろうから。



鍵のかかっていないシュの部屋へ入り、

その場に転がっていたトロフィーでシュの頭を叩いた。


「あ...っ。」


つい先程までアカを殴り蹴っていたシュは

無惨に転がった。


シロは武器なんて持ってきていない。

ここにある物で殺した方が焦って殺した感が出るから言い逃れできるからだ。


「じゃあ、私帰るから。アオ、よろしくね。」


動画を無意味に流したら盗聴のことをバラす、お前らも犯罪者だということを釘さして

シャを食べさせるためにクロを連れてくることにした。





「本当にいいの?」


クロは嬉しそうに聞いた。

シュは身長が高かったから食べられる面積が広いのだ。


クロはモグモグと人肉を噛みちぎり、

骨を砕いていく。


アカはそんなクロの姿を恨めしそうに見ていた。


「アカは本当にお前のことが好きなんだよ...

俺のことなんかよりもな。だから俺もあいつも言わない。あいつの親友になってやってくれよ...。」


アオは悔しそうに言った。


アカはチラリとシロを見た。


「私を、受け入れてくれる?」


シロが尋ねた。


「受け入れてたよ、最初の殺人の時よりずっと前からね。私は貴方に殺されてもいい。

貴方の隣じゃなくてもいいから、側にいたい。」


アカとシロは見つめあった。


それを、クロが暗い瞳で見つめた。

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