第15話:従魔
「さあ、今日こそ従魔を選んでいただきますぞ」
セバスチャンがとても楽しそうに話しかけてくる。
教科書の件が片付いたので、気持ちが楽になったようだ。
セバスチャンには本当に悪い事をしてしまった。
教科書を貸し与える事で、俺が傷つくなんて考えもしていなかった。
父上と母上から指摘されるまで、全く気が付かなかった。
でも、教えてもらえたお陰で、自分がどれほど愛されているのか分かった。
いや、以前からセバスチャンと両親から愛されている事は分かっていた。
分かってはいたが、愛され慣れていないからその深さが分からなかった。
言葉と態度に出してもらって、ようやくその深い愛情が分かった。
今回も、全ての責任を三人が分け持ってくれた。
俺が負担に感じて、自責の念に囚われないためだ。
もう前世の復讐など考えず、この世界で恩返しする事だけを考えよう。
「そうだね、今日こそ従魔を選んだ方がいいね。
セバスチャンは何を選ぶべきだと思う」
「さて、そのような事を私に聞かれるよりは、ご自身の好みが大切です。
イーライ様には亜空間があるではありませんか。
どれほど多くの従魔を従えられても、全て亜空間で飼うことができます。
どうぞお好きな従魔を全て魅了されてください」
セバスチャンは簡単に言うが、図鑑で見ただけでは決められないよ。
好きな魔獣を全て飼えるとは言われても、可愛いと思えないと嫌だ。
でも、まあ、可愛いばかりではなく、番犬や猟犬にも憧れるな。
公爵家にも軍用犬がいるが、従魔に同じことをさせられるのだろうか。
させられるのなら、魔狼や魔虎もいいかな。
この世界にはフェンリル狼というとてつもなく強い魔獣がいるという。
「セバスチャンはフェンリル狼を見た事があるか」
「残念ながらわたくしは見た事がございません。
ですが、わたくしの養母は見た事があると申しておりました。
ですから諦めなければいつかは捕まえられると思います。
フェンリル狼を従魔になさいますか」
「いや、いや、いや、そう簡単に捕まえられるはずがないよ。
でも、セバスチャンの言うように、いつかは飼いたいと思うようになったよ。
だから、フェンリル狼を飼う前に、他の狼を飼ってみようと思うんだ。
一番簡単に魅了する事のできる狼はなんていう狼だい」
「左様でございますね、簡単と言うのなら、魔獣ではない普通の灰色狼になります。
ですが、イーライ様に魔獣以外の従魔など飼わせるわけにはいきません。
イーライ様ほどの魔力がある方は、最低でも魔獣を飼うべきです。
そうなると、火狼か角狼になりますが、どちらも大魔境には幾らでもおります。
前回イーライ様が狩られた魔獣の中にもたくさんいました。
早速大魔境に入って魅了の魔術を試しましょう」
叛乱者たちに自白魔術をかけて、大魔境を狂わせていた方法が分かった。
王家の重臣から貸し与えられたという魔道具が原因だった。
その魔道具は王家が取り返そうとするだろうから、俺の魔法袋に保管してある。
だからもう魔獣の暴走を恐れずにゆっくり従魔探しができる。
だが、俺が集まった魔物を手あたり次第に狩ったから、大魔境と言えども魔物の数が激減しているようで、そう簡単に目当ての魔狼が見つかるとは思えないのだが。
「分かったよ、セバスチャン。
俺を置いて先に一人で魔境に入るのは危険だぞ、少しは落ち着けよ」
俺のためにここまで夢中になってくれる人がいる、うれしくありがたい事だ。
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