学園ダンジョン

 遅刻は厳禁なので、王都に行くのはできるだけ早い方が良いという結論に至った。


 そして現在、王都へ向かって走行中である。


 ジグラが彼の転移の魔道具を使う事を提案してきたが、道中の景色を楽しみたいので、こうやって走っている。


 歩いて行って野宿もしてみようかな……と思いもしたが、遅れるとかなりまずいだろうから見送ることにした。


 今の俺はぶつかった時の衝撃だと、車以上の危険性を秘めているかもしれないので、人を見かけたら減速をするようにしている。


 その結果……加速してもすぐ減速の繰り返しになり、少しずつだが、確かにストレスが溜まってきている。


 ちょうど休むのに向いていそうな大きさの岩を発見したため、そこに座った。日陰だからか少し涼しい。岩のひんやりとした感じも良い。


 ひんやりとした感じを長く味わいたいので、ちょくちょく据わる位置を変えながら、ストレスが溜まらなくて速く移動できる方法を考える。


────

──俺は岩から下りると、周りに人が居ないことを確認して……高くジャンプした。顔に冷たい空気が当たる。


 俺はある程度の高さまで上がった事を確認すると、手のひらを後ろに向けて、水をそこから勢いよく放った。


 その瞬間、俺の体は前方に進みだした。だが、それよりも速く俺の体は落下を始めた。また顔に冷たい空気が当たる。目がからからになりそうだ。


「うーん……もっと水をたくさん出す必要があるな。だけど、調整はきつそうだなぁ。」


 落下した俺だが、防御のステータスが六桁であるため、傷一つ負わなかった。さすが六桁だ。


「やっぱ走っていくか……」


────

──「突然来てすまんな。ダイチの様子を見に来た。」


 本当にすみません。


「問題ありません。では、ダイチ様の元へご案内致します。」


 二人並んでゆっくり歩く。今は授業中だからか、廊下にいる生徒を見かけない。


「結局、学園内にダンジョンを引っ越す事に決定したのか?」


「ええ、しましたよ。そして既にダンジョンでの自習の許可を出しました。今は授業中ですのでダンジョン内に生徒達は居ませんが、放課後になるとたくさん来ます。」


 早いな。まさか一ヶ月ちょっとでここまでするとは……流石学園長だ。


 しばらく歩いていると、前にこの学園に来たときには無かった、石造りの大きな建物が、俺達の前に現れた。


「着きました。この建物の中に、ダンジョンの入り口と管理局、ダンジョン部の部室……まあ名ばかりの物もありますが、それらなどがあります。」


「ダンジョン部?」


「ダンジョンの攻略を主に目標としている部のことです。かなりの人数が所属していますよ。あのテツヤも、です。」


 彼はそう言うと、両開きの扉の片側を開いた。

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