ゴブリン

 紹介された『服屋ドバン』で服と防具を買って、『ドバンの寝床』で一泊した俺は、冒険者ギルドに行った。また、お金を支払うときに、銀貨一枚が銅貨十枚と同じ価値であることに気づいた。


「ゴブリン討伐、報酬は一体につき鉄貨一枚か…十体なら銅貨一枚、百体なら銀貨一枚だな。級も自分の一つ上。これにしよう。」


 常設依頼だからか紙の取り外し禁止のため、俺は昨日と同じ受付嬢のところで申告して、手続きを完了させた。


「ソウタ様、ゴブリンは群れで強さをなします。くれぐれも油断しないようにして下さい。」


「大丈夫です。助言ありがとうございます。」

 

 では、行くか。


 事前の聞き込みで、町の北の森にゴブリンがいることはわかっている。素材の買い取り金額は非常に少ないので、討伐だけして帰ろう。


ピコーン

〈レベルが上がりました〉


またか。


 歩いて十分程度で、森に着いた。良い匂いがするが、前の世界の森の匂いとは少し違う。


「グギャ」


 何か出てきた。緑色の皮膚に一メートル程の背丈、間違いない。ゴブリンだ。


「鑑定。」


名無し (0)

ゴブリン Lv3

性別 ♀

ステータス

体力 8/16

魔力 6/6

筋力 13

敏捷 10

防御 8


スキル 斧術 Lv1

斧を持った時、筋力のステータスが1.05倍になる。レベルが上がるほど、強化倍率が上がる。


 弱いが、群れだと危険度が跳ね上がるのだろう。さて、あれを試してみるか。


「水魔法」


 水をゴブリンの喉の中に発生させ、喉を塞ぐような水の膜をイメージしながら操作すると、。ゴブリンは、その場にかがみこんで、しばらくジタバタした後、急に動かなくなった。死んだフリの可能性もあるため、体力のステータスだけ表示させた。


「鑑定」


体力 0/16


 どうやら死んでいるようだ。他のこともやってみよう。そう思ったとき、


「「「「グギャグギャ」」」」


 俺は四方を囲まれていた。まあいいか、ちょうど良い実験体のお出ましだ。


「水魔法」


 正面のゴブリンには、強い酸性の水を、右の奴には弱い酸性の水を、左の奴には多量の水を、後ろの奴には百度の水をそれぞれの喉の中に生成した。


 俺はずっと気になっていた。ラノベでよく見る魔法の打ち合い。上空から敵を囲むようにして打ち出される、大量の氷や水や火などの槍。それらを潜り抜けて手加減無用で戦う熱いシーン。


 俺はずっと思っていた。

〈何で敵の体がある位置に直接それらを生成しないのだろう?〉


 敵が常に動き続けているから?楽しくないから?ルールでやってはいけないから?それとも生成自体が不可能だから?


 その理由はわからない。


 敵の体があるところに直接生成すれば、した途端に敵はダメージを負うだろう。氷ならば体を貫き、火ならば体を外からも内からも焦がし、水ならば息の根を止め、敵はいつの間にか致命傷を受けていることに気付き、パニックになるだろう。少なくとも俺はそう思っている。


 それに、千発打って全部避けられるより、一発でも良いから確実に当てたほうが燃費も当然良い。何でやらないんだろう。


 気付いたときには、四体のゴブリンは物言わぬ骸と化していた。


 その後、約三十体のゴブリンを討伐して、冒険者ギルドに戻った。あの親切な受付嬢さんのところへ行って、


「依頼の報告に来ました。」


「ソウタ様ですね?すみませんが、ギルドマスターがソウタ様をお呼びなので、それは後程とさせて頂けますか?」


「大丈夫です。」


 十中八九スキルのことだろうな。俺は受付嬢さんの後をついていった。


「ギルドマスター。ソウタ様をお連れしました。」


「ごくろうさん。二人とも入ってくれ。」


 扉の向こうからは、太い声が聞こえた。

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