-38- 「白いワンピースの幽霊」

 大通りにある空き屋、以前は喫茶店だったのだけれど、この空き屋の前にはよく幽霊が立っている。


 白いワンピース姿の若い女の人で、下を向いてただ静かに立っていて、その足元には花が備えられている。


 お父さんに聞いた話では、この空き屋が喫茶店だった頃、この女の人は誰かとの待ち合わせで、ある日この場所に立っていたらしい。


 けれど、待っている間に喫茶店の2階の壁に取り付けられていた看板が落ちてきて、下敷きになって亡くなったそうだ。


 この場所にはいつも花が備えられているけれど、男の人が備えに来ているのを何度も見かけた。


 その男の人は花を供えて、少しの間静かに手を合わせてから、帰って行く。


 すると、女の人はそれを見送ってから、すうっと消える。


 男の人はよく見かけたけれど、そう言えば最近、段々見かける回数が減ってきた気がする。

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