-14- 「お守り」

 下校途中、一角堂のお兄さんに会った。


 街中でもいつもの着物姿だけど、買い物帰りなのか、手に提げたスーパー八百万のエコバッグが、何だか違和感があった。


「おや、水鏡の坊ちゃん。こんにちは」


「こんにちは」


「坊っちゃん、何か変なのが後を尾けて来てますよ。相変わらず、おかしなモノに好かれますねえ」


 お兄さんの言葉に振り向くと、少し離れた所に立っている電柱の陰から、人型のもやもやした煙みたいなイキモノがこちらを伺っていた。


「坊っちゃん。子どもさんが、あまり変なのを尾けて歩くものじゃありませんよ」


 そう言うと、お兄さんは着物の袖に手を突っ込んで、中から何かを取り出し、僕に手渡した。


 交通安全、と書かれたお守りだった。


「適当なお守りの中身だけ入れ換えた物です。交通安全と言うよりは、悪霊退散のお守りですかね」


 悪霊退散と言われ、僕はお守りを持ったまま後ろを振り返った。


 すると、お守りの中から蛇のようなモノが首を出し、電柱に隠れている奴に対してシャーっと威嚇した。


 そいつは逃げて行った。


 それから僕は、そのお守りをランドセルに付けている。

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