アイリ(7さい) パパ(38さい)②

~アイリ(7さい しょうがく2ねんせい) パパ(38さい)~

【6月10日】 

あのね、パパ。

きょう、絵本をつくりました。

学校のしゅくだいです。

だいざいは「ちょっと、ふしぎなおはなし」です。


そこで、わたしは、パパがけいけんした、

ふしぎなおはなしについて、かくことにしました。

パパがいつも聞かせてくれるやつです。

しゅ人こうは「パパ」じゃおかしいので、「しょう年」にします。


* * *

(だい) あつい、なつのひの、ゆうがたの、きせき


しょう年はこう校3年生。

大学にごうかくするためにべんきょうしています。

しょう年はなつ休みも、べんきょうです。


その日、しょう年は大きな町まで、もぎしけんをうけに、いきました。

しょう年は、とってもいなかにすんでいました。

なので、しけんはおおきな町までいかないとだめでした。


しけんがおわったあと、しょう年はバスでいえにかえろうとしていました。

なんかいか、のりかえないと、いえまでかえれません。


しょう年は、はたけが、まわりにあるバスていに、すわっていました。

セミがうるさくないていました。


しょう年は、まえの日、おそくまでべんきょうをしていたので

ベンチでうたたねをしてしまいました。

やねがあるバスていだったので、

夕日がさえぎられてすごしやくなっていました。


ザー。

とつぜん、はげしい夕立がふりました。

しょう年は、その音で目をさましました。


しょう年は、人の気はいをかんじました。

よこをむくと、いつのまにか、一人の女の人がすわっていました。

女の人は、本をよんでいました。


水たまがついた青いワンピース。

つばの大きな、むぎわらぼうし。

かたまでのびたかみ。

しょう年より十さいくらい年上にみえました。


「いつのまに、きたのかな? きれいな、おねえさんだな」

しょう年はおもいました。


バスは、まだまだきません。

夕立はふりつづいています。

小さなやねの下で二人っきり。

しょう年はドキドキしました!


しょう年はおもいきって、はなしかけることにしました。

「なんの本を、よんでいるんですか?」

おねえさんは、本から目を上げて、しょう年のほうをむきました。


「エスエフよ。わたし、ちょっとふしぎなはなしが大すきなの」

おねえさんはニッコリとわらいました。

はじけるえがおに、しょう年のドキドキはさらに、たかまりました。


「ぼくも、エスエフ、大すきです」

本とうは、大すきといえるほどではなかったのですが、

おねえさんとはなしがしたくて、そういいました。


「あら、そうなの? うれしい」

「それにしても、よくねむっていたわね。つかれてたの?」

「はい、きょう、しけんがあって、きのうはべんきょうしてたんです」

「へー、それは大へんね」

おねえさんは、まえのめりになって、きいてくれました。


「ぼく、きょう、たん生日なんです」

「おめでとう。いくつ?」

とか。


しょう年はうれしくて、たのしくて、じぶんのことをたくさんはなしました。


しばらくすると、はげしい夕立はやみました。

うそのように、なつの空がもどってきました。

ひぐらしが、キキキーってなきはじめました。


しょう年は立ち上がって、のびをしながら、やねの下から外にでました。

「夕立、やみましたね!」


うしろから、おねえさんのこえが聞こえました。

しかし、はっきりと、きこえませんでした。


しょう年は、なんていったのか、ききかえそうとおもってふりかえりました。

しかし、そこにはだれもいませんでした。


「あれ?」

しょうねんはおどろきました。


「あるいてかえることにしたのかな?」

しょう年はあたりをみわたしました。


しかし、おねえさんのすがたは、どこにもありませんでした。

けっきょく、その日はおねえさんに、あえませんでした。


しょう年は、またあいたいと、おもいました。

おねえさんのことを、いっぱいききたいとおもいました。


なんども、バスていにいきました。

でも、二どとあうことはありませんでした。


それから、ながい年月がたちました。

しょう年は大人になり、けっこんして、むすめが生まれました。


そして、そのむすめにかたるのでした。

「パパがこう校生のときにね……」って。


(おわり)

* * *


どうかな?

がようしに絵もかいたので、

あわせて、よみきかせしてあげるね。

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