第45話

「さあ、レース開始時間が迫ってきましたね。ルールは無法ですが、勝ち負けはゴールに先に自分たちのチームが五台入った時点で、決まります。つまりは……斉藤さん?」

 竹友がマイク片手に説明した。

「6周目で5台を相手より先にゴールさせれば……勝ちとなります。逆にその間に相手が五台入ってしまえば負けですから……厳しいですね」

 斉藤は一呼吸おいて続けた。

「奈々川首相がレースを挑んだのだし、当然と言えば当然ですがね……。矢多辺 雷蔵氏のAチームには相当、分が悪いですね。でも、いやー矢多辺 雷蔵氏は金持ちで……羨ましいでしすね」

「ええ……あ! 相手側のチームがやってきましたね」

 見ると、20台の多種多様な自動車がやってきた。


 全長12メートルの大型トレーラーや、10tトラック。フェラーリやスカイライン。などが現れた。

 それらを運転しているのはノウハウである。

「やっぱり、ノウハウですね……」

 竹友が呟いた。

「ええ。やっぱり危険ですからね……しょうがないですね。……私はやっぱり参加しません……で、よかったです……」

 斉藤も呟いた。


「また、ノウハウだ」

 島田はガヤドルに乗って銃を片手で撃つ真似をした。

「相手も本気だな」

 その隣の田場はディアブロに乗っていた。

 僕はランボルギーニ・エストーケに乗って、ノウハウたちが乗っている車を見ていた。


 僕がランボルギーニ・エストーケ。田場がディアブロ。島田ガヤドル。遠山ウラカン。山下ソニア。淀川ラプター。広瀬アヴェンタドール。流谷はスカイラインGTR.原田はスカイラインクロスオーバーにそれぞれ乗った。夜鶴は晴美さんの護衛だ。

 快晴のレーシング場のコントロールラインに一斉にみんなとノウハウたちが着く。歓声もいつの間にか静まり、美人のレースクイーンが傘をさしながら静かに過った。種々雑多な車の唸り声は闘牛さながらに地響きを立てていた。


 スタート。


 いきなり、ノウハウのカナソニックスカイラインが僕の先頭を取った。

 僕はすぐさま時速320キロのスピードを上げ、前方のノウハウのカナソニックスカイラインを追い越そうとハンドルを握り、アウト・イン・アウトをした。コーナーの外側から内側に向かって切り込み、再び外側に抜けることだ。このようなラインを走ることによってコーナリングスピードを速く効率よく走れるのだ。

 コーナリングを曲がるが、相手も油断できない。未だ先頭を維持していた。同じアウト・イン・アウトをしたのだ。後方からもノウハウの10tトラックが走り出し、遠山のウラカンが、クラッシュ寸前でスピンした。

 ノウハウは数が多く。種々雑多な自動車を駆使していく。


「おっーと、Aチームの遠山選手。スピンしたが持ち直したーー!!」

 竹友がマイクに絶叫した。

「あのスピン後に瞬時に持ち直すには、かなりのテクニックが必要です。スポーツカーで小回りが効くなんて聞いた時がないですね……」

 斉藤が感心した。

「おっと、田場選手と島田選手が多数のノウハウの車にクラッシュしていきます!!」

 竹友はそう言うと、真っ青になった。

 何故なら、10tトラックに田場と島田は体当たりを仕掛けているからだ。

「な!? 10tトラック相手に体当たりをしています!!」

 竹友は気を振り絞って、隣の斉藤に顔を向けると、

「いやー……恐ろしいですね。かなりの猛スピードですし、恐ろしく頑丈なスポーツカーとドライバーの精神力です」


 応援席の晴美さんは心底、心配な顔をしていた。

 ここで、負けるとエレクトリック・ダンスが日本の将来になってしてしまう。けれども、みんなの命が大切なのは当たり前なのだ。

「雷蔵様~」

 ヨハもスカイラインに乗ったノウハウたちのドライビングテクニックに、必死に対抗しているAチームを険しい表情で見ていた。

「ええ……私も信じています……」

 晴美さんは頷いた。


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