ご近所STORY2 エレクトリック・ダンス

主道 学

第1話 プロローグ

「奈々川首相。C区の発展はこれからのことも考えて、早急にしたほうがいいと思います」

 テーブルに座っている面々はみなスーツで固い面持ちだ。

 実直そうな男性の声に、

「ええ、私もそう思いますが……。ハイブラウシティ・Bの二の舞ではいけません。どこまでいっても、人間は人間なのですから……人として生きなければいけません」

「ですが……」

 もう一人の男性は神経質そうな男だ。

 「それでも、C区の存在は私たちにとって、重要なことになってきましたね……。仕方ありません」

 奈々川首相。奈々川 晴美。夜鶴 公と結婚した身だが、とある事情で今は同居はしているが、離婚扱いになっていた。黒の高級なスーツを着こなし、そこへ黒の長髪を自由になびかせている。目元にチャーミングなホクロがあって、美しい人だ。

「スリー・C・バックアップ……あくまでも、人間の人間による人間のための人間へのサポートとして可決しましょう」

 そこまで話すと奈々川首相は、ふと、時計を見た。

「あ、云話事町TVの時間です。誰かテレビ点けてください」

 奈々川首相はこの部屋の隅に設置してある。64型のワイドスクリーンのTVを点けさせた。昔はA区というところだけに放送されていた番組は、今ではB区にも放送されて視聴率もうなぎ登りだった。


「今晩は! 云話事町TVッス!」

 美人のアナウンサーがピンクのマイクを握っている。

 背景にはここB区というところのビルディングから夕陽が映えている。

「はい。藤元 信二です」

 藤元は3年前の日本全土を左右する野球の試合から信者が3人も集まったようだ。おかっぱ頭の黒い髪で、後ろの髪は少し長め。メガネを掛けていて小柄な体躯。寒いのに青いアロハシャツに白のスニーカーと短パン。神社なんかでお祓いに使う棒を持っている。20代の男で云話事町新教会の教祖である。

「明日の天気はきっと――」

「へっくしゅん!!」

「気温は――」

「へっくしゅん!!」

「――のようで――」

「へっくしゅん!! へっくしゅん!!」

「――になります。肌寒いですね」

 美人のアナウンサーの話の最中に藤元のくしゃみが割って入る。

「運勢は、藤元さんどうぞ」

「はい、今日は時々、へっくしゅん!! になります。へっくしゅん!! ラッキーですね」

 気のせいかな……美人のアナウンサーの眉間に皴が深く刻まっていく。

「それでは、みなさん今日もお疲れさまでした!! ……聞こえねえだろ!! このバカ!!」

 美人のアナウンサーはピンクのマイクで藤元の頭を刺した。


 番組が終わると、奈々川首相は元に戻り仕事を再開した。

 ここは云話事マンハッタンビルの126階。窓の外には今にも泣き出しそうな鉛色の空とビルディングが聳えている。太陽が遮られて、外は薄暗い。

「さあ、次の案件は……」

 奈々川首相は席で居住まいを正して、テーブルの上に置いてあるC区のデータが書いてある散乱した数十枚の紙を覗いた。

 膨大なそのデータ表は2年前から変わっていない。

 6年前の大規模な都市開発プロジェクトの産物。「ノウハウ」というアンドロイドの技術を刷新したC区が管理・発展しようとしていた。


 時は西暦2060年。日本を二つのA区とB区という地区にして、急激で非人間的な発展が主だった政策は3年前の日本を変えた野球の試合で決着がついた。その後に、もう一つ新たに誕生したC区ができて2年の歳月が過ぎ去った。

 西暦2042年から少子超高齢化が急速に進み。今では65歳以上の人は全国民の59パーセントまでたっしてしまった。国民二人に一人はお年寄りということとなった。総人口8千万人の将来。経済力で各国とせめぎあえずに衰退してしまった世界。

 現奈々川首相の意向で、A区は主に農業や漁。食料などの生産や、経済面でもB区のサポート的な立場を保持。B区は日々の日本の主要な更なる経済的発展を目指し、C区は日本特有な技術開発などのアンドロイド製造などの工場を発展していった。

 余談だが、アルファベットの地区を総じて云話事町という人々が今でもいるのだった。



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