第15話
――ビー!!
HPが0になった時とは違う音が響く。
この音は降参を選んだときに流れる音だ。
アタシは大きい画面を見る。
陣フウガの欄に大きく降参の文字が。
『フウガ選手降参!! よって溫井ホノオ&ムギ選手の勝利~!!!!!!』
――降参?
――嘘でしょ?
――フウガくん、どうして?
ジン・キョーがいつものようにアタシの勝利を告げるが、観客達はいつもの大歓声はなく戸惑いの声。
アタシも戸惑ってる。
最後に使った頭部用スキル・イナズマ砲は撃たれた相手が一時的に痺れるスキル。攻撃チャンスを少しでもと思って付けた。
一時的だけど動きを止めるスキルだから大ダメージを与えるスキルじゃないのに、どうして?
「溫井さん」
ぐるぐると考えてたら陣フウガが話しかけてきた。
いつもの飄々とした態度はなりを潜め、何処か真剣な表情をした彼が立っていた。
「正直に言いますと貴女の事を憎んでました」
「え?」
「ぶっちゃけると僕は一番に倒すべき兄を、陣ライガを、僕より先に倒した貴女を快く思ってなかったんや」
「え、ええ~・・・・・・」
突然の告白にどう反応していいか解らず、戸惑う。
つまり、陣フウガは陣ライガを倒したアタシの事を嫌ってったって事でOK?
普通に話しかけてきたから全っ然わかんなかったよ!?
「あっはっは。突然すぎて驚いてますな~。僕は貴女を憎んでた、だって、ずっと目標だった兄さんの最初の敗北を奪った貴女を。だから、貴女に勝つことしか考えてなかった。貴女がどう戦って動くかなんて微塵も考えてなかったんですわ」
「は、はあ・・・・・・」
「戸惑ってますね~」
「当然でしょ。いきなり憎んでたとか言われて、降参されて、コッチは戸惑うことしか出来ないよ!」
少し怒り気味に今の状況を言うと陣フウガはそんなアタシを可笑しそう笑う。
なんか可笑しいことアタシ言った?
「いやぁ~、そりゃあそうですわな。降参したんは私情で貴女に勝つことしか考えず弱点を見抜かれた阿呆に降参が似合うと思ったからや。それに阿呆のせいで負ける風来を見たくなかったのもあるんや。
いや~、弱点を見抜かれたのは誤算でしたわ~」
「フウガくん、アタシね、正直言うとこのフィールドでなかったら竜巻が真っ直ぐに飛ばないって弱点分からなかったよ」
「え?」
「魚たちの動きを見てなかったらアタシは見抜けなかった。だから、普通のフィールドだったら、アタシは負けてた。ううん、見抜けたとしても誤った判断をしたら負けてた」
淡々と話す陣フウガにアタシはなんて言って良いか解らずだからといって何も話さないのもなと思って、今、アタシが思ってることを話す。
もし、あの時、一直線にしか飛ばないと解っていても、アタシが原作で知っていた弱点、竜巻を作る代わりにビーストモード時特有の強化はされない事と解除されるまで竜巻を出し続ける間は動けないことを優先させたらアタシは負けていた。
「フウガくんなら、アタシを返り討ちに出来るスキルをしっかり装備してたと思うしね。フウガくんに勝てたのは運が良かっただけだよ」
「溫井さん、運も実力のうちという言葉を知ってます?」
「うん?」
「いや、何でもないですわ。まあ、次に戦うときは万全の策を練って、真っ正面からぶつかりますわ。ほなな」
そう言って陣フウガはアタシに背を向けて去って行った。
降参されたからか、なんか、勝ったって気がしないな。
「フウガ」
「兄さん、不貞寝してはったんではないですか?」
「お前が落ち込んでると思って折角来てやったのに最初に言う言葉はそれか~!?」
「あっはっはっは!」
会場から出たら待ち構えていた兄・ライガにフウガは軽口をたたくとその反応を見て愉快そうに笑うとライガはムスッとした表情をしフウガを軽く睨む。
「兄としてお前に慰めに来てやったのに・・・・・・」
「兄さん、僕が負けたからって凹むと思います?」
「それはそうやけど、お前、半年間、考えて作り上げた改造の弱点を見抜かれた凹んでると思うやろ!!」
「確かにそれは凹みましたけど、あれを招いたのは僕の慢心や。だから、僕が慢心していたという事実に凹んでるんや」
「・・・・・・これからどないするんや?」
「風来のビーストモードを本来のものに戻す。きっと、いや、この会場に居る実力者達にはもう改造の弱点を見抜かれとる。フフ、一から出直しや」
「そうか、それなら俺も 「ああ、兄さんは手伝わなくていいです」
「ええ~」
フウガに断られ凹むライガにフウガはフフと笑った。
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