第2話

「あれが夫婦岩か~」


「結構、近くで見れるのね」


 チヨちゃんと一緒に水族館に来て、今は夫婦岩を見てる。

 有名みたいだし、一応、見ようとなってね。

 ヒバナは熱出してお休みです。


 ヒバナにポスターを見た後に大会にエントリーしようとサイトを開こうとしたらサーバーがパンクして繋がらなかった。

 そりゃ、そうだ。勇気ユウマに次ぐ、№2である大麓マオに挑める権利を優勝したら貰える大会に大勢の人が殺到するのは当たり前だ。

 だけど、そんな事になるなんて運営側は思っていなかったらしく、翌日に大会場所の狭さもあって、人数制限をかけ、抽選で決めると発表した。

 その結果、見事、アタシは抽選に当たった。

 いやぁ~、生前、2.5次元、舞台のチケットが当たるように願掛けしてたのが効いたかな?


「あれ? 溫井さんやないですか」


 夫婦岩を眺めてたら、糸目の少年――陣フウガと会った。


「確か、陣フウガくんだっけ?」


「君は溫井さんのお友達の・・・・・・」


「名乗ってなかったわね。入生田チヨよ、よろしくね」


 穏やかに挨拶するチヨちゃんと陣フウガ。

 陣フウガは兄、ライガが破天荒なせいでキツいツッコミをいれて止める事が多いせいか毒舌キャラ扱いされるけど、基本は穏やかな子だ。

 兄が絡まなければ。


「此方こそ、よろしゅう。溫井さんが此処に居るって事は抽選に当たったんですか?」


「え、ええ、そうだけど。もしかして、陣くんも?」


「そうですよ、僕だけ当たったんです」


「僕だけ?」


「はい。兄さんも応募したんですけど見事に外れて、落ち込んで不貞寝してはるんですわ。

 兄さん、大麓さんにトコトン惚れとるから、今度こそ格好いいとこ見せる!! って意気込んでたんですけどね~」


 そうだ。この世界の陣ライガはこの世界の大麓マオに惚れてるんだった。

 今度は戦って、カッコイイ所を見せるつもりだったのかな?

 なんにせよ、正直、ウザ絡みされそうだったから居なくてよかったような・・・・・・。


『もうすぐ大会受付を開始します。チケットをお持ちの方はお早めにお並びください』


「タイミング良くアナウンスが。これはそろそろ行かないと。

 そうそう、名字やなくて名前の方で呼んでくれません? 普段から名前の方で呼ばれとるから、そっちの方が馴染み深いんですわ」


 そう言うと陣フウガはスタスタと水族館へ向かって歩き出す。

 アタシはそれを黙って見ていたら、アンタも参加者でしょ! と言われ、陣フウガの後に続くように水族館へ向かった。



「ホノオさ~ん!!」


 水族館に入るやいなや、派手は服装を身に纏った雪野マフユに大きな声で呼びかけられた。

 なんかすっごいキラキラしてる!! あれ私服なの!? 町民大会の時は制服着てたよね!?

 心なしかハナちゃん、ちょっと距離開けてる!!

 今の雪野マフユに話しかけられたくないんだが!? でも話しかけられたんだが!? 此処は一応、普通に対応しよう!!


「こここ、こんにちわ。マフユくん」


「ホノオさんも参加するんだね! いや~、ハナに着いてきて良かった」


 ハッハッハッと笑う雪野マフユの背後に絶対零度の目で実の兄を見ているハナちゃんの姿が。

 うん、誰だって、派手な服装をした兄をそう見たくなるよね。

 とりあえず、普通に会話しよう。


「マフユくんもこの大会に?」


「いや、今回は私だけです。兄様は今回は大会の参加受付すらしてませんわ」


「ああ、今回はプライズを長期メンテに出してるというものあるがハナが強くマオさんとの対戦を望んでいるからね」


「そうか、ハナちゃん。マオさんの事、憧れてるもんね!」


「それもありますけど、私の目標でもあります。必ず、この大会を勝ち抜いて見せますわ」


 普段は冷静なハナちゃんの目に炎が宿っている。

 ハナちゃんは本気だ。

 本気でこの大会に挑むつもりだ。

 あれ? 可笑しいな。本気のハナちゃんを見て、アタシは嬉しいと思ってる。

 なんで??


「これはこれは雪野ハナさんも参加するちゅーことは大変な事になりそうですわ~」


「君は、陣フウガじゃないか。君も?」


「ええ、そうですよ」


「へえ、そうなんだ。それはそうと、どうして、ホノオさんと一緒に居るんだい?」


「此処にくる間に会いましてね。なんか、気に障ることでも?」


「・・・・・・・・・・・・いや、なんでもないよ」


 一瞬だけど、雪野マフユが陣フウガを睨んでいたような。

 アタシと一緒に居るのが気になったみたいだけど、なんでだろ?



「ハッ~ハッハッハッ!! ついにこの時がきたでござる!!!!!!」



 突然、ホール中に声が響く。

 今度は何!?


「ねえ、彼処見て!!」


 チヨちゃんが指差す方、天井の中心に逆さまに張り付いている謎の忍者!?


 忍者は高笑いをしながら、目にもとまらぬ速さで降りると、また高笑いをする。

 笑うのは好きなのかな。


 忍者をマジマジと見ていたら、チヨちゃんが。


「あの忍者の格好してる子。同じクラスの薄井くんだ」


 爆弾発言をかました。

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