気前キャンディー
マイマイは士官食堂に入った。55人の士官が机につき、食事をしている。
「おっと、君は誰だ」
机を立った士官が1人、マイマイに話しかけた。
「オドマンコマからカーバ所長の助手として参りました、マイマイです」
「何をしに来たのかね」
「飴を作りに来ました。キッチン責任者の方にキッチンを貸していただけないかお尋ねしたいのですがよろしいでしょうか」
「……いいぞ。ただし焦がすなよ」
「責任者の方は……?」
「私だ。で、どんな飴を作りたいんだい?材料は?」
「材料は砂糖だけです」
「……砂糖だけ?」
「ええ。べっ甲飴ってご存知です?」
「……なんだそれ」
「作ればわかりますよ」
「わかった。調理器具は?」
「鍋とクッキングシート、ゴムべら、広げて置いておける場所です」
「簡単なんだな」
「ええ」
マイマイはキッチンに入ると、鍋に計量カップ2杯半の水を入れ、450グラムほどの砂糖を溶かし、グツグツと沸騰させてから1分ほど加熱した。液の色が黄色く変わる。カラメル化である。
「今だ」
マイマイは火を止め、広げてあったクッキングシートの上に黄金色の粘りを持った液体をまんべんなく広げた。ほどなくして液体が固まり始めると、マイマイはクッキングシートを器用に動かして液体をクッキングシートの中央に寄せ、細長く伸ばしていく。
「ここからどうやって丸めるんですか?」
「細長くなったら上から少し潰して、まだ柔らかいうちに包丁で切るんです」
マイマイは黄金色の塊を細長く伸ばし、上からクッキングシートで押さえてから包丁を握った。
トトトトトン、という小気味良い音が響く。飴はあっという間に程よい大きさに切られた。
「これを小さく切ったクッキングシートで一つずつ包めば完成です」
マイマイはクッキングシートを正方形に切りながら言った。
しかし都合150個もの飴を包むのは大変な作業だった。マイマイはその日の夜、ようやく自室で飴の個包装を作り終えた。キッチンの責任者に持っていくと、責任者はべっ甲飴をまじまじと見つめた。
「なるほど、綺麗なものだな」
「そうでしょうそうでしょう。純粋なカラメルですからスッキリとした味ですよ」
責任者はべっ甲飴を口の中に入れて転がし、「おいしいな」と言ってマイマイに硬貨を差し出した。飴10個分ほどの価値である。マイマイが飴を10個取り出すと、責任者はポケットを探って言った。
「いいんだ、チップだよ」
「いいんですか、こんなに」
「代金とその9倍だ。決して多い額じゃないはずだぞ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
マイマイは硬貨を飴とは反対側のポケットに入れ、お辞儀をしてから自分の部屋へと戻った。
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