研究室アラート

 オドマンコマの後方に連続して砲弾が落下する。カーバは前方で地雷が爆発する衝撃と後方で砲弾が炸裂する衝撃に揺れるブリッジの手すりを掴み、大きく息を吸い込んで命令を発した。

「巡航ミサイルを準備せよ!」

「わかりました!」

「砲の位置はわかったか?」

「はい。パッシブによると5時です!」

「よし、標的を砲にセットしろ」

 オドマンコマの前方特殊発射管に小型巡航ミサイルが装填される。

「一番発射管、発射!」

 巡航ミサイルは発射管から出ると、低空を飛翔しながら5時の方向に転回した。

「カメラ誘導、精度よし!全速力で敵の砲座を目指します!」

 ミサイルはジグザグ飛行をしながら飛んでいく。そしてついにカメラが砲座を捉えた。

「見つけました!命中まであと2秒!」

 ミサイルは砲座に突っ込んだ。IRISの砲座でミサイルが炸裂する。

「砲座の火薬庫に火が入ったようです!」

「よし、あとは地雷原を抜けるだけだな」

「衝撃波、来ます!」

「総員、衝撃に備えろ!」

 オドマンコマを火薬庫が炸裂した衝撃波が襲った。

「オドマンコマはおそらく核以外のあらゆる兵器の直撃に耐えるが、危ないのは内部の研究施設の機材だ。爆発の衝撃で壊れるおそれがある。大変危険だから攻撃を受けたらすぐに実験室から出るように」

 メリナはそう聞いていたが、この衝撃波は予想外だった。

「うわっ」

 衝撃波は実験室横の廊下で手すりに掴まっていたメリナを吹き飛ばした。開いていたドアから出てきた割れたビーカーの破片にメリナが尻もちをつく寸前、マサがメリナを受け止めた。

「危ないじゃないか」

「すみません、マサ中佐」

「別にメリナが謝ることじゃない。気にするな」

 メリナはマサの腕から降りた。

「そういえば……IRISは退けたらしいな。地雷原も抜けたようだ」

「なぜわかるんです?」

「さっきの大きな衝撃を最後に何の攻撃も来ていない」

 マサの分析を聞いたメリナは箒を取りに廊下の奥へと向かい、掃除用具入れを開けた。

「そんなことしなくても私が掃除するんですがね」

 ビアはそう言ってちりとりと箒を掃除用具入れから取ると、アームを器用に操ってガラス片をちりとりに取り、ゴミ箱に捨てた。

「ビア、私はこの地域から一刻も早く離れたほうがいいと思うんだが」

「そうですね、IRISの攻撃がここまで及ぶとなると……このリビアおよびアルジェリア地域からは離れたほうがいいと判断されるかもしれませんね。場合によってはサハラ砂漠自体から離れなければいけないかも……」

 ビアはそう言ってため息をついたようだった。

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