沸騰インスピレーション
カーバは枚舞の作ったフレンチトーストを食べながら山口と話していた。
「トマトを美味しくする技術が完成したんですけれども、そもそも生でトマトを食べる国があまりなくて……」
「なら生で食べる食べ方の説明書をつければいいんじゃないか?」
「そうですね、今朝のサンドイッチに入ってたトマトは研究成果なんですが……」
「そういえば甘くて美味しいトマトのサンドイッチがあったな」
「そうですね、あれです」
「あれは旨かったな。たしかに生もアリだと思ったよ」
「ありがとうございます」
「それでだ、生だとどうやって食べるのが一番美味しいんだろうな?」
「何もつけずにそのままいただいてもよし、ビネガーで和えても塩をかけてもマヨネーズをかけてサンドイッチにしてもよしなんですが……」
「一番はやっぱりそのままか?」
「ですね」
「ならそれをアピールしないといかんな。ハッケンバッカー工業の重役に頼んでコマーシャルを作らせるか」
「トマトを生で食べましょう……ですね」
「そういうことだ。ネット広告を出せばたぶん受ける」
「たしかに。面白そうですね」
「なんならコマーシャルのシナリオを書いて、さらにトマトの苗が出演とかでもいいぞ」
「いいですね……シナリオ書いてみます」
「わかった。できたら持ってきてくれ」
「はい」
山口はフレンチトーストを平らげると、ノートを取り出してアイデアをまとめ始めた。
「……生トマトをそのまま切って食べる様子を映す。それから苗を出して……」
「ここでやっても別に構わんが、できたら部屋でやってほしいかな」
「すみません」
「もう一度言うが、できたら見せてくれ。重役会に送る」
「はい」
山口がぶつぶつつぶやきながら部屋に戻っていったのを見たカーバは、皿の上煮目線を移してフォークを取った。そしてフレンチトーストを食べながら、カラメルシロップに手を伸ばしていた。手元のコーヒーもいつの間にかマグカップの半分ほどになっている。
「疲れてるのかもな」
「そうですね、カフェインと糖分を摂るなら寝た方がいいですよ」
「ありがとう。少し寝るよ」
「わかりました。副長との交代時間までには起きてくださいね」
「分かってるよ」
「それからIRISの襲撃があったら否応なしに起きてもらいますがね」
「君は私に寝てほしいのかな?それとも起きていてほしいのかな?」
「寝てほしいですね」
「わかった、寝るよ」
カーバは所長室に入り、奥にあるロフトベッドにブランケットを用意してそれにくるまった。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
寝ている間、カーバは最近久しく見なかった夢を見た。そしてカーバは、汗でぐっしょり濡れたブランケットの冷たさで目を覚ました。
「またあの夢だ……よっぽどのトラウマなんだな」
「何を見たんですか」
「悪夢だ」
「といいますと?」
「聞きたいか?」
「はい」
カーバは部屋の電気をつけ、ぽつりぽつりと話しはじめた。
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