第98話「幼馴染みは甘やかされたい」
「――それで、言い訳があるなら聞くけど?」
真凛と凪沙から離れた陽は、溜息まじりに佳純の顔を見つめた。
すると、佳純は頬を膨らませながら口を開く。
「向こうが突っかかってくるから、熱くなっただけだもん……」
「突っかかってくるように煽ってるのは佳純だろ……」
あまりにも子供な発言に、陽は頭が痛くなる。
しかし、佳純は納得いかなさそうだ。
「秋実さんばかり贔屓するのは良くない」
「贔屓じゃないし、秋実を特別扱いしてるわけでもない。そんなに仲良くしたくないのか?」
「別に、仲良くしたくないわけじゃないけど……」
陽からツッコまれ、佳純はバツが悪そうに目を背けた。
佳純も、真凛がいい子だということは知っている。
陽が関わっていなければ、まず間違いなく喧嘩をしない相手だろう。
だから、仲良くしたくないとは言い切れない。
「どうしたら仲良くできる?」
このまま叱っても状況は改善されないため、陽は佳純に手を差し伸べる。
すると、佳純は少しだけ考えて口を開いた。
「私が求めたらいつでも甘やかす――」
「却下」
「――っ! ――っ!」
陽が断ると、佳純は不服そうに頬を膨らませてポカポカと陽の胸を叩き始めた。
全力で不満をアピールしている。
「叩くなよ……」
「だ、だって、おかしい……! 今のはオーケーする流れ……!」
「いや、それって元の木阿弥になるだろ……」
今まで好き放題甘やかしてきた結果が、過去の絶縁に繋がっているのだ。
さすがに、同じ轍を陽は踏んだりしない。
「じゃあ、何なら受け入れるのよ……」
「改めて考えると、難しいな……」
「――っ! ――っ!」
陽が困ったように笑うと、佳純は再度不服そうに叩き始めた。
先程よりも若干力が入っており、陽は痛そうに眉を顰める。
「とりあえずにゃ~さんの動画の件もあるんだし、我慢をしてくれよ。このままだと、俺が約束を守らないって言っても文句は言えないぞ?」
「むぅ……」
「頬を膨らませて拗ねても駄目だ。約束を守ってくれないなら、俺も守れない」
陽がそう言うと、佳純はシュンとおとなしくなった。
だから、陽は優しく佳純の頭を撫でる。
「凪沙が何を考えているかはわからないけど、今更あいつが嫌がらせのために俺たちにあんな提案をすることはないだろ? 一旦、話に乗ってみよう」
「……反抗してたのは陽のくせに」
「お前なぁ……? こういう時くらい素直に聞けよ……」
「まぁ、勝負に勝ったら陽に甘やかしてもらえる権利が手に入るなら、文句はないわ」
「本人相手によく言えるな……」
恥ずかしげもなく欲望を口にする佳純に対し、陽は困ったように頭をかく。
すると、佳純がニヤッと笑みを浮かべた。
「もう今更すぎでしょ。秋実さんにはできない、私だけの武器を使わなくてどうするの?」
「……まぁ、秋実に喧嘩を売らないなら好きにすればいい」
「うん、そのつもり」
どうやら佳純のほうは落ち着いたようなので、陽は佳純を連れて真凛たちの元へと戻った。
(さて、次は秋実か……)
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あとがき
もう早いところでは、
『負けヒロインと俺が付き合っていると周りから勘違いされ、幼馴染みと修羅場になった』
が売り出されているようですね!!
早速TSUTAYAさんのライトノベルランキングで17位になれており、
正式発売日よりも大分早く出てるのに嬉しい限りです……!
是非、これからもよろしくお願いします♪
今日は出来たら夜も更新する予定です!
話が面白い、キャラが可愛いと思って頂けましたら、
レビューをして頂けますと幸いです(#^^#)
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