第40話「天使のような女の子」
「――真っ赤、だな……」
「はい♪」
渡された弁当箱の中身を見た陽が思わず呟くと、真凛は嬉しそうに頷いた。
そして期待した目で陽の顔を見つめてくる。
そのせいで陽は再度視線を弁当箱へと移すが、そこには肉や野菜が真っ赤に染まっていた。
(あれ、秋実って料理できなかったか……? いや、でも、いつも凄くおいしそうなのを食べてるよな? それに、このおかずたちも色はともかく見た目の形はとてもいいし……)
陽は目の前に広がる真っ赤な世界を見つめて考え、その後チラッと真凛のお弁当の中身を見る。
するとそちらは、同じ具材を使っているのに色とりどりなとてもおいしそうなおかずが詰められていた。
「…………秋実ってさ、わざわざ俺のために激辛物にしてくれたのか?」
それらの物的証拠から答えを導き出した陽は、なんともいえない気持ちになりながら真凛に尋ねる。
すると、真凛は嬉しそうにコクコクと一生懸命に頷いた。
「がんばりました♪」
そして、ニコッとかわいらしい笑みを浮かべてそう言ってきたのだが、陽は思わず額に手を当てたくなる。
(いや、わざわざ俺用に作ってくれたのは嬉しいけど、頑張る方向を間違えてないか……?)
メインはともかく野菜まで真っ赤なことで、陽は真凛のことを意外と抜けている女の子かもしれない、と思った。
「とても辛いですが、おいしくできたと思います」
「味見したのか?」
「さすがに味見なしで食べてもらうわけにはいけませんよ。味見してみたらとても涙が出ました」
そう聞いた陽は思わず、辛さに悶える真凛の姿を想像してしまった。
とても涙が出たということでかなり激辛な味付けにしているのだろう。
「言っとくけど、俺は普通の料理もちゃんと食べられるからな?」
自分のために無理して辛い物を作ってくれたことを悪く思った陽は、今後真凛が同じ無理をしないようにそう伝える。
すると、真凛はニコニコ笑顔で口を開いた。
「でも、辛い物がお好きなんですよね?」
「まぁ、そうだけど……」
「では、がんばった甲斐がありました♪」
陽の言葉に対し、かわいらしい笑顔で返す真凛。
真凛のその素敵な笑顔を見た陽は気恥ずかしい思いを抱き、視線を落として弁当の中にある真っ赤に染まったおかずへと箸を伸ばした。
(うまいな……)
想像以上においしい料理を食べた陽は次々とおかずへと箸を伸ばす。
そんな陽を真凛はニコニコ笑顔で見つめるのだった。
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