カナリア奇譚 ~或る女学院の赤い秘め事~
百谷シカ
【柘榴石ノ章】-秘匿-
1 春の金糸雀
「さてさてお立合い! 今年、我らが〈
「3年、
「……」
群の中からおずおずと進む小柄な女学生。
俯いているせいで、肩につくかつかないかの髪から華奢な首が見える。
蒼白く、
それに見るからに血の気の足りない鷲子が金糸雀倶楽部の活動をこなせるのか、不安が募るだろう。
「ささっ、こちらへ!」
4年の伊鈴と並んでも、たった1才しか違わないとは信じられない。
かといって、14才という実際の年よりもっと幼く見えるわけでもないが。
「よろしく、鷲子さん! 誕生月を教えてください!」
「……です……」
「6月ですね? ……今年の〈
拍手喝采。
鷲子は戸惑いと緊張で、今にも卒倒しそうになっている。
だったら、審査など受けなければよかったのに。
「ではでは続きまして、〈
「……」
歓声が上がった。
私は、ひとつ息をついて歩き出した。
「弦瑠さんは今年の編入生でいらっしゃいます! 甘く嗄れたような大人びた美声の弦瑠さん、可憐な〈
「きゃぁーッ! 弦瑠さまぁーッ!!」
「なんと、もう親衛隊がいらっしゃるご様子! おお、これは期待できますね! 〈
ひょうきんな伊鈴と眉目秀麗な
「よろしく。精一杯、精進いたします」
「弦瑠さんは確か1月でしたね……なので《
伊鈴越しに鷲子を見遣ると、直前までこちらを見ていたらしい目が爪先に逃げた。あれの面倒を1年見るのか。
「この他の新しい団員は、5年
こうして春の一大行事は幕を閉じた。
輝かしい希望と、生命の煌めきを、真昼の空に撒き散らして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます