第115話
二十人余りの護衛に監視される中、俺は四ツ井と共に街中を歩く。
事前に目的地を決めていたわけではないが、俺と四ツ井の足は自然と近くのショッピング・モールへと向いていた。
この辺りで有名なデートスポットといったらそこぐらいだろう。
「ふんふふん〜」
ふと隣を見ると、四ツ井は鼻歌なんかを歌って非常に上機嫌だった。
「楽しそうだな」
「ええ。こうして意中の相手と放課後に制服で歩くのが夢でしたから。私は今、最高に楽しいですよ」
「…っ」
そんなことを言って笑顔を浮かべた四ツ井は、悔しいことにかなり魅力的だった。
「安藤さんはどうですか?今、楽しくないですか?」
「お、俺は…」
答えあぐねていると、四ツ井がちょっと不安そうな顔で見てきた。
俺は押されるようにして、本音を言う。
「楽しいよ…正直」
「…!嬉しいですっ!」
ギュッとさらに四ツ井が抱きついてくる。
ぎゅむむと柔らかい感触が腕に押し当てられて、ドキリとさせられる。
「よ、四ツ井…くっつき過ぎじゃ…」
「さあ、早く行きましょう、安藤さん!」
聞いちゃいない。
俺は早足になる四ツ井に引っ張られるようにしてショッピング・モールへと向かう。
「着きましたね」
「だな」
「それで…この後どうしましょうか?」
「うーん…どうしよう」
「私は何も考えていなかったんですが…安藤さんに何かプランは?」
「すまん。正直何も考えてない」
「そうですか…困りましたね」
「だな」
あれから20分後。
俺たちはショッピング・モールに到着していた。
が、すぐにデートスタートとはならず、入り口で立ち往生してしまう。
二人ともこの後に何をするのか全然考えていなかったのだ。
「安藤さんは…以前にデートしたこととかはあるんですか?」
「…ないです」
こういう時にデートの経験があれば男の俺がリードできるんだが、あいにく俺は放課後に異性と遊ぶのはこれが初めてだった。
俺は無力感に、肩を落とす。
「あ、あぁ、すみませんっ、別に攻めているわけでは…私だってデートしたことないですし…」
四ツ井が落ち込む俺を見てアタフタとしている。
気を使われるのが、今は余計に辛い…
「よ、四ツ井は…どこか行きたい場所とかないのか?映画を見たいとか、服を買いたいとか…」
このショッピング・モールには映画館や衣料店、本屋など様々な店舗が入っている。
これは四ツ井のためのデートでもあるため、彼女にやりたいことがあれば、俺はそれに付き添うつもりでいた。
「そうですねぇ…」
四ツ井が頬に手をあてがって思案する。
「あっ…そうだ」
やがて、何かを思いついたようにポンと手をついた。
「げーむせんたー?というところに行ってみたいです!!」
瞳を輝かせ、興味津々と言った感じでそんな希望を口にした。
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