第13話
「お、はるみ発見。ってことは、まだ櫂もいる?」
「玉っち」
職員室へ向かう廊下を曲がったところで声をかけてきた玉っちは、クラスは違うけど矢代と同じ元テニス部だ。
矢代とは仲良しで、学校帰りとか休みの日とかよく遊ぶらしい。
私が玉っちと話すようになったのも、矢代を介してがはじまりだった。
「もうとっくに帰ったんじゃないの? 私、先生にパシられてたから。約束してた?」
「いいや、してない。ちょっとテニス部の部室で遊んでて遅くなったから、まだいるなら一緒に帰ろうと思ってさ。今日も日直になっちまったってボヤいてたの思い出したから」
「どうせ私が日誌を雑に書いたせいだって文句言ってたんでしょ」
「言ってたねー。『はるのせいで、はるのせいで、はるのせいで、はるのせいで、はるのせいで!』って100万回くらい」
「え、そんな怒ってた?」
担任と同じくらい暢気な玉っちは、ケラケラと楽しそうに笑った。
そんな玉っちの言葉を真剣に受け取ってしまったことにはたと気が付いて、次の玉っちの言葉を待たずして舌打ちしたい気分になった。
「んなわけないじゃん。櫂の頭の中、そこまではるみでいっぱいじゃねーわ」
「……わかってるし」
わかってるけど、他人の口から言われると腹が立つ。
っていうか、矢代が私のいないとこで私のことを話てるってところに、無意識とはいえにやけて喜んでしまった自分が、最高にムカつく。
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