第27話 文化祭の手伝い
「えっと、手伝いに来たんだけど…」
何だ? 葵がボーッと此方を見ている…。
やっぱり椿先生の言う通り来ない方が良かったか?
「葵…だよな?」
「え、あ、はい」
だよな。合ってるよな。
「で、何をすれば良いんだ? 道具とかは?」
「あ、これでやって貰えれば…」
「オッケー」
学校の筆か…久々に使うな。
俺は葵から筆を受け取り、パレットにある絵の具に筆先を付ける。
「ま、待って下さい。貴方は誰なんですか? 随分神原さんと親しげですが…」
俺が葵の隣で作業の準備をしていると、1人の男子が俺達の間へと入る。
「おっと…えーっと…」
俺はチラッと葵の表情を伺う。
…いや、分かんねぇー。何て答えれば正解だ? 義兄だって言っていいのか?
そう思って目を合わせるが、葵は何も反応して来ない。
「ちょっと絵が上手い知り合い、かな?」
「絵が上手い知り合い、ですか…?」
その子は訝しげに俺の事を見て来る。
まぁ、怪しいよな。分からなくもない。
「今日は看板作りを手伝ってっと頼まれてね」
今は取り敢えず看板に絵を描いて行こう。
「葵、看板はどういう風に描いて行けば良い?」
「…は、はい。そうですね…可愛くお願いします。ポップな感じで、フワフワで」
ははは、ポップでフワフワね。うーん、ハッキリ言えば少し難しいかもな。最初は下書きをしてからにした方が良いかもな。
俺は筆を置き、近くにあったシャーペンで簡単に下書きを描いていく。
ササッ サッ サーッ
こんなもんか。
「これは…?」
「下書きだよ。大まかに何を描くかを構成してるんだ。葵達がメイド喫茶をする事は知ってるけど、まだ具体的なイメージが沸かないからな」
「あ、あぁ。そうですね」
まぁ、今日はこれだけでいいかな。看板を作るのも大事ではあるけど、他の事を進めて店の雰囲気がどんなのかを決めるのも大事だ。
店と看板のイメージが全く違ったら問題だからな。
「それで…環ちゃんだっけ?」
「あ、は、はいっ!」
「これはメイド服? 随分上手く出来てるね? でも此処をもう少しこうしたら…」
「凄い!! 上手くくびれがある様に見えます!!」
よく服飾科の奴がやってたテクニックだけど上手く行って良かった。
「…」
「ん? どうした?」
「いえ…別に」
葵が此方を見ていた気がしたけど…まあいっか。
「一先ずは店の装飾をどうにかしようか? 店は教室で開くのか?」
「えぇ…そのつもりですけど…」
「なら誰の目にでも止まる様にして工夫しないとな」
「え、それはどうすれば…」
「例えば何か目玉商品が在れば、それを中心に何か作っていけば良いし、何かコンセプトがあるというならそれを意識しながら一から何かを作っても良い…そこは自分達で考えた方が良いかもね」
俺がそこまで手を出してもしょうがないし。
「なるほど…考えてみます」
それから俺がちょくちょく手伝っていると、思っている内に時間は過ぎ、あっという間に帰る時間になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます