│生きていた証明│

これは彼女が遺したノートのたった一文である。



今回はいつもと違い、少し真剣な面持ちで書き写していこうと思う。


当時のその日を父は心臓に悪い意味で記憶に残る日だったと、


今も笑って話している。


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死ぬかもしれない...



たった、一つ


兆しに問わず予期した“それ”は


僕の意思なく、一瞬で感情を支配した。



まるで、ここが生まれつき印された足場なんだと言うような顔で







僕は胸の異様な圧迫感を、呼吸で何とか隙間を与え


ただひたすら


水面に浮かび立ち上がる砂をすくい吐き出すように


ペンを走らす。




死ぬかもしれない


なんで急に?どうして...?あれっ...胸が苦しい。


その次に感じたことへの恐怖。


「隣に...居るの?」




僕は目の前の世界にばかり気を取られ、忘れていた。


すぐ隣にいる、君の瞳に映らない僕の“存在”を


振り切れない死という“概念”を



時を経て。忘れたその日も、ずっと隣。背中合わせ。


いつしか気付かず持たれかかっていようとも、それでも人はきっと欠伸をする。





どうやら、人は


1年間で約5600万人が死んでいるらしい。


1ヶ月で約466万人


1日 約15万人


1秒で1.8人が死んでいる。



正直、調べてはみたがいまいちピンとこない...




僕が分かったのは、ただ


人は息をするように死ぬこと


だが、何故か


人は息をするようには生まれないということ




...とても効率よく合理的に出来ている。


しかし、もし人間を、生命を創り出したものがいるのならば


そいつは生きることの難しさを深く見落とし軽視しすぎていた。




いつ振り向くか分からない その時


僕はたった一つ。何を差し置いてでも欲しいもの


それを手に入れる為に



今を 生きていく












あぁ...もう、そろそろ時間か。


時間と共に死への恐怖が薄れてく...



そう感じた僕は


まだ未完成のノートを托し


伏せた言葉を君へ遺した。時間が鍵の暗号に乗せて。


本当は...


本当は、今すぐ走って伝えたい。


けど今じゃない...



未来から過去の君へ向けての言葉


*きっと熟しすぎていると思うので、すぐに捨てること。



byバニラバー大好き系バンドマン






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