その十六 日記 六月七日

 昨日は色々あって日記を書く余裕がなかったので、今日まとめて書こう。


 ああ、最低。わたし、最低だ。まじに落ち込む。また、真仁くんを巻き込んでしまった。今度は完全に想定外で、完全にわたしのポカ。

 面白いトマソンを見つけて(見つけたのは上部くんだけど)調子に乗っちゃった。立ち入り禁止だったのに、無理やり登って…… うー、ドアって部屋の外に向かって引いて開くのが普通なのに、あれは外の階段から押し開くようになってた。


 想定外だけど、言い訳できないよね。蝶番の方向に気がついていれば、もっと注意深ければ、開く可能性を考えてゆっくり押せば…… 過ぎたこことだから後で後悔しても仕方ないかぁ。


 今まで、友達とわたしが面白いと思ったことを共感できなかったから調子に乗った私のせい。

 真仁くんが身代わりになってくれなければわたしは大怪我をしていたかも知れない。


 彼にはいつも助けられる。

 彼は、わたしを助けてくれる。これで二度目だ。


 今回の事では真仁くんには感謝しても感謝しきれない、謝っても謝りきれない。彼はあっさりと許してくれたけど、と言うかひと言もわたしを責めなかった。彼は今回の事故ではわたしの心配ばかりしていた。そうだ、少しは責めてくれても良かったのに、でないとわたしの性格からいっても、ドンドン甘えてしまいそう。


 あーあ。

 友達だ、親友だといっても限度がある筈なのに、彼はどこまでも付き合ってくれる。彼の事は裏切れないなぁ。もっと大切にしなければと思う。


 そう言えば、病院でずっとわたしを穏やかな目で見ていた。それに気がついて振り返るとすぐに視線を外される。なんどもそんなことがあって最後は気がついていないふりをしていた。

 何も言わずただ見ているだけ、わたしの何を見ているか判らないから気になったけど不快じゃない。彼が見ていると言う事はそばにいると言う事、それも不快じゃない。


 彼はわたしの傍にいてくれる。そして助けてくれる。彼の気持ちをわたしは知ってしまっている。その気持ちはふたりの間ではなかった事になっているけど、何だか落ち着かない。


 だめだ、わたしはまだ恋をする準備ができてない。誰かを好きになる自分が想像できない。真仁くんの事は気になって、友達として大切だと思うけど、それ以上の感情が判らない。


 でも、好きになるなら真仁くん、かも《・・》しれない。

 ああ、こんなことを考えるなんてこと想像できなかった。とても、心が重い。


 彼に気持ちを返せたら心が軽くなるのだろうか。


 心が軽くなるとしても、自分が楽になるために、というのは何か違うよね。そんな動機で好意を返されてもうれしくない、と思う。でも、男の子だと違うのかなぁ。


 うー、わたしには相談したり、恋バナする同性の友達がいないんだな。こんな時に困るなんて思ってもみなかった。

 でも、良く考えたらわたし、別に真仁くんのことを男の子として好きなわけじゃないから、恋バナの話題でもなかったよね。


 悩むのも変な話なんだ。よし、あまり考えない事にしよう。

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