第188話 竜皇女と神は出逢った⑤
「それでは何があったか教えてもらえるかな?」
全員が揃ったところでキラトがレティシアへ話をうながした。
キラトの執務室には現在、シルヴィス達十人、魔族側はキラト、リネア、ムルバイズ、ジュリナと護衛の騎士達が五名入り口付近にいる。執務室はかなりの広さがあり、この人数であっても暑苦しさは感じることはない。
「はい、私たちはいつものように
「ふむ……」
「その結果、何かの意図を隠すための陽動の可能性を考えたんです。そこで、
「なるほど……そこで尻尾を掴んだということか」
「残念ですが掴み損ねましたけど、一つのところで存在を
「ほう。ヴィリス殿は中々の魔術師と聞いてるが神族が秘匿のための結界を見抜くことができる程とはな」
「ええ、ヴィリスがいなければ見つけることはできなかったと思います」
レティシアの言葉にヴィリスは畏まった。ただ、畏まったといえどもその表情には誇らしげな感情がその表情には表れている。
レティシアもヴェルティア同様に部下達をよく褒める。そしてシャリアスもそうで、叱責よりも褒めることで部下達のやる気を引き出すのだ。
もちろん、叱責が必要な時はきちんと行うことを姉妹は徹底されており、その辺りは家風と言えるだろう。
「ヴィリスの見つけてくれた結界を破ると、四本の剣に守られるように一つの珠があったんです」
「珠か……」
「はい。それに近づいたら剣が砕け散り、まず四柱の神が現れましたので、斃しました。下級神だったのであっさりと斃すことが出来たのですが……その後にシュレンと名乗る神が現れたというわけです」
「シュレン……か。シュレンがわざわざ現れるということはその珠はよほど天界にとって大切なものなのだな」
キラトの言葉に全員が頷いた。
「ムルバイズ、ジュリナ。直ちに調査に向かえ。護衛は騎士二個小隊、並びに魔術師一個小隊だ」
「承知いたしました」
「承りました」
「いや、待て。レンヤ達の部隊を先行させて現場を確保させろ」
「レンヤ達をですか? それは少し過剰ではないですかな」
ムルバイズの言葉にキラトは首を横に振る。
「いや、神が再び現れないとはかぎらん。今のレンヤ達ならば神族であっても勝利することは可能だ」
キラトの言葉はレンヤ達の実力を評価していると同時に、
レンヤ達は
また、同時に不死身の男が
「……確かにそうですな。軽率でした」
「よい。この調査は天界の意図を読むために必要なものだ。万全に行う必要がある」
「はっ!! それでは直ちに」
ムルバイズとジュリナが一礼するとそのまま執務室を出ていく。これより調査隊の組織に入るのだ。
「レティシア殿、今回の件は本当にありがとう」
「いえ、ただ気になることもあります」
「気になること?」
「はい。私が最初に斃した神達はシュレンさんのことを蔑んでいました。“所詮はお坊ちゃんやシオルの浅知恵だ”と」
「浅知恵……?」
レティシアの言葉にキラトは思案の表情を浮かべた。
「ええ、ひょっとして天界は二つの意思に基づいて動いているのではないかと」
「二つ…シュレン、シオルの意思とディアンリアの意思か……」
キラトの言葉に今度はシルヴィスが言葉を発する。
「ひょっとしたら……シュレンは今回の件こそが本当の狙いから目を逸らすためのものかもな」
「ん?どういうことです?」
シルヴィスの言葉にヴェルティアが首を傾げながら尋ねた。
「つまりな。レティシアが今回見つけた珠を守るのにシュレンほどの神が守りにきたという事実によって俺達をミスリードしようとしているということだ」
「言われてみれば……私が珠を破壊したことに対してシュレンさんは興味を示しませんでした」
「それも狙いかもしれんな……本当に厄介なやつだ」
シルヴィスの声は苦々しいものであるが、声の奥に感嘆の感情が含まれているのを全員が察してる。
「なるほど、とりあえずはムルバイズ達の調査の結果を待つことにしよう」
「そうだな。情報を集める必要があるな」
シルヴィスとキラトの間で話がまとまったようである。
(お義兄様とキラトさんが警戒するシュレンさん……厄介そうな相手ね。でも私と互角……いえあっちの方が少し強いかもしれない……世界は広いわね)
レティシアはシュレンとの勝負を思い出して小さく笑った。
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