第113話 暗躍⑩
「さ〜て、行きますよ!!」
ヴェルティアは音を置き去りにした動きでソールの間合いに跳び込んだ。
「く……」
ソールはヴェルティアが間合いに入ると即座に斬撃を放つ。放たれた斬撃は胴薙ぎであった。ヴェルティアは急停止しソールの斬撃が掻い潜ると即座に動いた。
ヴェルティアはソールの間合に跳び込んだ瞬間に切り返した次の斬撃が襲ってくる。
「おっと」
ヴェルティアは首を薙ぎにきたソールの斬撃を屈んで躱した。ヴェルティアが右拳を振りかぶったところでソールは柄頭でヴェルティアへ打撃を放った。
ヴェルティアは後ろに跳びソールから再び距離を取った。
「おお〜まさかお嬢の攻撃を二回も
ユリが素直な賛辞をソールに送るが、それはソールにとって侮辱でしかない。ユリの凌ぐという評価は間違いなくヴェルティアの方が強者であるという評価であるのだ。絶対的強者に挑む弱者という構図であるように思われてソールとすれば不愉快極まりないものであった。
「舐めるな」
ソールは怒りのために顔を歪めてヴェルティアへと斬りかかった。怒りはあるとは言ってもソールの動きは洗練されたものであるのは間違いなかった。
「おお!! やる気ですね!! 相手しましょう!!」
ヴェルティアが無意識に煽りの言葉を入れた。
ソールの頭頂部への斬撃をヴェルティアは両腕に魔力を込めると
「なんだと!?」
ソールの口から驚きの声が発せられた。それだけヴェルティアの取った行動が常識を大きく逸脱したものだったのだ。確かに生身で剣を受け止めるなんて普通は行わないというよりも選択肢自体にのぼらない手段だ。
「せい!!」
ヴェルティアはそのままソールの間合に飛び込むとそのまま双掌打を突き込んだ。
ドゴォォ!!
「がはっ!!」
凄まじい衝撃にソールの口から苦痛の声が漏れる。
ヴェルティアはそのまま双掌を腹部から上にずらすとソールの顎を打つとソールの顎が撥ね上げられた。通常であればここで追撃は終わるだろうが、ヴェルティアはさらに寸打ちの要領で肘をソールの鳩尾に容赦なく叩きつけた。
「が……はぁ……」
ソールは肘を立てて半身を起こすと口から血が滴り落ちる。ソールはヴェルティアを睨みつけようと視線を向けたが、ソールの視界にはヴェルティアの右靴が見えていた。
もちろん、ヴェルティアの追撃である。
「うぉ!!」
ソールは転がってヴェルティアの追撃をかろうじて躱すと何とか立ち上がった。
「ぐ……貴様ぁ……」
ソールはヴェルティアを睨みつけながら呪詛の言葉を吐き出した。ソールとすればあり得ないという思いが強いのだ。
「ウォォォォ!!」
そこにミルケンが立ち上がるとヴェルティアへと襲いかかった。戦鎚を振り回しヴェルティアに襲い掛かる光景は通常であれば、か弱い美少女の危機と考えるところであるが、もちろん事実は違う。
ヴェルティアは戦鎚を余裕で躱すとそのまま右拳をミルケンの顔面に入れる。ミルケンがヴェルティアの一撃により目の焦点を乱したのは間違いなく一瞬失神したからだ。
「ソール様!! 行ってください!!」
ミルケンが叫ぶとソールはギリッと奥歯を噛み締めるとそのままクルリと踵を返して走り出した。
「あ〜待ってください!! 神が逃げるなんて情けなくないんですか!!」
ヴェルティアの言葉を背に浮けるがソールは止まることはしない。そのまま走り去ろうとした。
「お前の相手は私だ!!」
ミルケンがソールを追おうとしたヴェルティアの前に回り込んで叫んだ。
「いや、もうあなた如きが出る幕ありませんよ」
ヴェルティアはそのままミルケンの顔面に再び右拳を入れると大きくのけぞらせるとそのまま胸ぐらを掴み体を引き落とすとミルケンは大きく体勢を崩した。そこに振り上げたヴェルティアの右肘をミルケンの顔面へと容赦なく落とした。
ヴェルティアの右肘がミルケンの人中という急所へと突き刺さった。ヴェルティアの肘はそのままミルケンの顔面を打ちぬくと大きく減り込みミルケンはそのまま崩れ落ちる。
ミルケンはピクピクと痙攣していたがすぐに動かなくなる。
「あ〜あ、逃しましたね。まぁ逃げ切れるわけはないんですけどね」
ヴェルティアはわかりきったように言ったところで自分達に向かってくる気配を察した。
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