第05話 無能判定②
「何でしょうか?」
少女がシルヴィスへ視線を向ける。
「私は元の世界に戻れるのでしょうか?」
シルヴィスは丁寧な口調で少女に尋ねる。少女を始め、ここにいる連中に対して不信感はあるのだが、最初から波風を立てる必要はないというのがシルヴィスは判断の結果だ。
「私達は元の世界に戻ることは出来るのでしょうか?」
シルヴィスは弱々しい感じを演出する。シルヴィスが弱々しい感じを演出したのは、弱者を装うことで、少女達の対応がどのように変わるかを見ようとしているのだ。
「わかりません……。女神様の神託では魔王を倒したときに全てが解決するとありましたが、それが何を意味するのかまではわかっていないのです」
少女は申し訳ないという表情と声を浮かべてはいるが、言葉の内容は利己主義の極致と言うべきものである。
勝手に召喚して、魔王を倒さないと帰さないというこちらを舐めまくっている。しかも、魔王を倒したからといっても戻れると確約したわけでもない。
それに後ろにいる者達がシルヴィスに向ける視線に確かに嘲りを感じた。
(どこまでも舐めた内容だな)
シルヴィスの不信感は増す一方であった。
「そうですか。魔王を倒さないと始まらないわけですね」
シルヴィスの言葉に少女は申し訳ないという表情を浮かべた。
(ふん、やはりか)
シルヴィスは心の中で呟く。シルヴィスの言葉に少女は態度を崩さなかったが、他の者達はそうではなかったのだ。シルヴィスの言葉を聞いたときに、またも後ろの者達の口角が嫌らしく上がったのを見逃すようなことはしなかったのだ。
(こいつらは俺たちに魔王とやらを殺させて何かしらの利益を得ようと考えてるんだろうな)
シルヴィスはそう確信する。それが事実かどうかはシルヴィスにとって問題ではない。本当に困っているのかもしれない。だが、シルヴィスは元の世界への帰還をエサに殺し合いをさせようという穢れた意思を感じた。大事なのはそこであり、シルヴィスにとって少女達は信頼に値しない者達であることを位置づけたのだ。
「しかし、それには準備が必要ですし、情報も欲しいのですが……」
「勿論です。我々、エルガルド帝国も支援を惜しみません」
「そうですか。助かります」
少女の言葉にシルヴィスは安心したように頷いた。もちろん、演技である。
「なぁ、あんた」
そこにシルヴィスに黒髪の少年が声をかける。
「ああ、なんだい?」
「あんたの名前は?」
「え?」
「ああ、俺達の中であんただけ名乗ってないんだが」
「あ、そうなのか?」
「聞いてなかったのかよ」
シルヴィスの返答に黒髪の少年は呆れたような声をだした。他の者達も同様であった。
「すまなかった。混乱してたので聞き逃してた。俺はシルヴィスって言う名だ」
シルヴィスは素直に名乗る。
「ああ、俺はレンヤ=シノミヤだ」
レンヤと名乗った少年はそういうとペコリと頭を下げた。
「私はヴィルガルド=カーレンスだ」
金髪の偉丈夫がぶっきらぼうに名乗った。
「私はエルナ=リークジードよ」
赤髪の少女も名乗る。やや冷たい印象を受けるが、シルヴィスとすれば別に不快になるものではない。
「私はエルガルド帝国の第一皇女ラフィーヌ=ゼノヴィア=エルガルドです」
最期に説明をしていた少女が名乗る。微笑みを浮かべた。
「え? 皇女様だったんですか!! これはとんだ失礼を」
シルヴィスは慌てて恐縮した体を装い頭を下げる。別に敬意など持ってはいないどころかマイナスなのだが、そうした方が都合が良いというのが、シルヴィスの考えだ。
「ふふ、別に構いませんよ。私は皇女という立場ですが皆様方は我々の救世主となられるわけですから」
ラフィーヌはそう言って微笑む、高貴なる生まれがなせる技なのか。ラフィーヌの仕草は優雅で美しいものだ。容姿が整っているというのも一役買っているのは間違いない。
「さて、今後の事はともかくですが、皆様方の適正を確認させていただきたいのです」
「適正ですか?」
ラフィーヌの提案にレンヤが疑問を呈した。
「はい。限られた時間の中で効率的な訓練を行うためには、皆様方の適正を知ってもらわねばなりません」
「なるほど」
「より正確に言えば神から授けられた
「
「はい。こちらで確認することになります」
ラフィーヌはそう言うと。後ろの者達に視線を向けた。ラフィーヌの視線を受けた者達は動き出すと、中央に魔法陣が描かれている机を運んでくるとシルヴィス達の前に設置する。
神官のような格好をした壮年の男性がブツブツと何かを呟くと魔法陣が光を放ちだし魔法陣の上に球体が現れた。
「さぁ、この宝珠に手を触れてください。その輝きにより
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