第9話 結晶と転生へ


 《非結晶アルモファス

 形を持たない結晶

 持つ者により形や持つ力が変わる。

 正しき者が持てば平和の結晶

 誤った者が持てば滅びの結晶


「ココロ、その結晶には平和を維持する力があり反対に国や天界までも滅ぼす力もあるの。渡る相手によって形や生まれる力が変わるのです。何千年前にとても大きな戦闘があり、この結晶の力により滅びた天界や国がいくつもありました。

レアリナはその結晶を魔王軍からなんとか奪う事が出来、レアリナに安全な場所へ保管してほしいと頼まれて、私がこの天界で預かることになったのです」

 こころはアルモファスについて質問する。

 「この結晶を壊すなり消すなりできない理由でもあるから保管することに?結晶がもたらす力が他にあるとか?」

 メティス様は結晶がもつ本来の目的を語り始めた。

 「私が魔法で怖そうしてもこの結晶はびくともせず、レアリナが消そうと試して見たのですが全然……。私がこの結晶に対して心から恐怖を取り除き大切に保管し始めたその日から、こちらから言う異世界のイキュバシタンボルグでは結晶がもつ魔力反応が消えた為、魔王軍は寄り付かなくなったらしいのです。しかし、ある魔王を除いては……レアリナの元で結晶を保管するとなると、魔王軍意外にも盗賊などに狙われやすい理由もありとても安全とは言えない為、天界での保管を決めたのです」


 「ある魔王とは?」


 「その魔王はかつて人間天界の神であり、誰もが憧れる美しい上位神の一人、ルーメニタス。

 雲よりも高いところに玉座を置いて努めていた神。しかし、神々のルールに反対意思を見せた処罰として天界からの追放。堕天使となり、使いしていた天使たちはルーメニタスを信頼していた為、着いていくことを決意。同様に天界を追放され、堕天使となり悪魔になったと言われているわ」

 「魔王と言えどもなんか可哀想だなぁ、神のルールに納得が行かなかったって、どんなルールだったの?」

 「実は堕天した理由には複雑なものがあるの。中には自分から堕天した神もいるくらい。神様は元々自分自身を尊重させるために天使を作ったとされているの。ですがその中には神様の意志に反する自由な意思を持った天使が天界を追放され堕天させ

られたと聞いているわ」


 「それって僕も同じじゃないか?」

 こころは心中思った。


「ここで面白いのは、神様は勝手ですのよ!自分で天使を考え作り出して、自由の意志を持った天使たちを自発的に神様を崇めさせようという考えがあったのです。なぜならば神様は無の心の中から自分に愛情を芽生えさせることに真価を見出したからだとされています。ですが自由な意思を持っている天使達は神様に自分から従おうとする服従心はなく、結局天界を追放され、そして堕ちた天使は人間になり、人間と恋に落ち子供を産ませていたりしているわ。

 もっと下に堕ちた天使は悪魔になり悪魔自身が人間に入り悪さばかりしているの。動物天界では人間になるのは難しいですが、人間天界の場合は下界は地獄に近い場所なのです。下界は悪魔の住処でもあるの。そこで私たち動物天界は癒しとされる動物達に魂を宿わせ命の大切さ、思いやり、愛、幸せ、ありがとうなどなど、ココロ達魂に人間と寄り添い暮らしてもらい、その心を人間に感じさせることで、戦争や犯罪いろんな罪が起こしてしまっている下界を構成させる為に始まったことなのです。それに動物天界神は私の可愛い魂たちを派遣呼びするのですよ!許せません!人間の成長でもあり魂の成長の旅なのですのに!だから堕天使になった気持ちでやり方を変えてきたのです。動物天界は自由の意思をもっても追放させられることはありませんのよ。だって動物天界では私が一番の上位神ですもの、ウフ」


 「あー逆に怖いわ……」


 また心中こころは思った。

 そしてルーメニタスとインキュバシタンボルグの関係が気になりメティス様に問う。

 「堕天使ルーメニタス、全てが悪いやつではなさそうだ。というか神々が作り出した魂を滅ぼし神までも滅すのが目的なら、なぜインキュバが危ないんだ?直接天界にぶっ飛んで来たらいいのに、神が作り出した結界くらい破れるだろ……」

 「インキュバシタンボルグは元々レアリナなが創造神の結晶を使い作り出した国なのです。国と言うよりも地球と似た星ですね。ただ地球には大陸や島が別れていてそれぞれ国が存在しますが、インキュバシタンボルグは星の名前でもあり大陸の名前でもあるのです。」


 「なるほどー!複雑じゃなくていいじゃないか!国が一つしか存在していないということだな!」

 「そうなのです。それに、レアリナに逆らう者は誰一人としておらずその存在を目にする者さえも居ないわ。魔王軍に使いする堕落してしまった盗賊でさえ結晶を狙っているものの、レアリナに近がづこうとすれば無にされてしまうでしょう。魔王のルーメニタスはそのレアリナを強く憎んでいるの。

その理由は、《アカシックレコード》

 アカシックレコードは元始からのすべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶。過去のあらゆる出来事の痕跡が永久に刻まれているの。宇宙誕生以来のすべての存在について、あらゆる情報がたくわえられているという記録層です。そのアカシックレコードには未来の情報も含まれていて、レアリナは催眠術でその情報を自ら除くことができ、ある程度の未来や過去を書き換えてしまう事もできるわ。ココロが居た下界もこの天界も魔界も全ての歴史と未来が保存されているのよ。」


  「あの、、、メティスからレアリナも魔王よりやばい力あるんじゃないか?魔王がだんだん可哀想にも感じてきたぞ……」またまたこころは心中思った。

 「魔王が何をしようが結局レアリナに未来を書き換えられてしまう為、戦闘にもならない平和が保たれているのよ。」


 「レアリナにそんな力があるなら結局こっちで結晶を保管する理由もないし、盗賊だって近寄れば消されてしまうのであれば気にする必要ないんじゃないか?それに結晶の力で魔王軍が寄り付かない話はどこへ、、、」


 「???……確かにそうよね。ココロ、それも突き止めてきてください!ッテヘ」


 「突き止めてって言葉がもう神秘的な神ではない……それになんだそのぶりっ子は……」

 ココロは段々メティスの天然さに気付かされて行く。


 「ココロ、取り敢えず大体はこんな感じです。そろそろ転生の準備をしないとですね。」

 ルナシエは後ろで涙しながらココロと別れるのを悲しいんでいる。


 「ルナちゃん!インキュバでまた会おう!絶対に来いよ!そして共にいきよう!あと、魔王軍に消されたお母さんお父さんにも会って助けてやる!魔王のルーメニタス底に堕ち過ぎた悪そうなやつでも無さそうだから、魔王なりになにか考えでもあるんだろう!メティス!頼む!」


 「はい!ココロ。いきますよ。」


 メティス様は魔法陣を天上と床に浮かべると、こころをその中心に立たせた。

 「時空次元無の天下界級0としてこの魂に肉体を降り立たせよ!フォールドイミナルゲート!」

 すると心の身体は透明になり、骨から神経、血管内臓あらゆる肉体の組織が構造されて行き、下界での感覚を取り戻して行く。


 「また会おうな!ルナちゃん!そしてお母さん!けんくん!さきちゃん!僕はいつまでも待っている!メティス!次に会う時は魔王とレアリナ連れて遊びにくるよ!アハ!」


 「ココロったら最後まで変な事をいいますね。楽しみに待っていますね。」


 すると部屋の扉の向こうから叩きつける音が鳴り響く。

 部屋の外側で見張りをしていた剣士と魔術が止める。


 「おい!なにをやっているんだ!やめなさい!」


 「ココロー!また会えるよな!?」

 「ラウク達ね……開けてくざい!」

 メティス様がそう言うと見張りが扉を開ける。

 「なんだ!すごい光だ!」

 「ココロー!間に合った!ハァ、ハァ、、、」

 「ラウクにメイラにシェルダー!てか人間の姿!?」

 「部屋の扉を抜ければ自由に人間の姿に変えられるのよ。ラウクも寂しい顔するのね」 

 「否定は、しません……。俺たちさぁ!頑張ってお前にまた会えるようにインキュバめざすよ!どれだけかかるかはわかんないどさ!」

 「私もシャルル様と共にその世界で過ごしたいですわ!それに私も寂しいです!」

 メイラは涙を浮かべていた。

 「ココロ、君に祝福あれ!また会いましょう!」

 シェルダーは未来を願った。

 「うん!ありがとう!またな!!いい旅ができそうだ!僕自身とみんなの願いを抱えいざ異世界インキュバシタンボルグへ!!!!」


 光の渦に包まれながら部屋中には光の線がすごい音で飛び交う。

 こころの姿はみるみる輝きを放ち輪郭だけがわかる。

 そしてダイヤモンドが散りばめられたように細かく輝きは砕け、光の飛び散った粒子だけを残して転生した。

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