第2話 天界の母
《前書き》
メティス様!今回の魂の数は前回に比べて少ないですね!」
「今日帰ってくる魂達は結構くせ者さん達ですよ。っふふ。556個の魂の旅はこれからです。」
美しい女性は窓から外を覗きながらそう呟く。
第二話 天界の母
こころは寝ているお母さんから少し離れた場所まで移動し、また横になりそこで息を引き取ることにした?
「もうこの身体も限界だな、、、16才かぁ、、、もう少しで17才だったけど魂に年齢はないから短いのか長いのか、、、その感覚はわからないままかなー。
ピンクハウスとお母さんの間が一番いいだろ」
ピンクハウスとは、こころお気に入りのペットハウス。
全体がぬいぐるみの質で出来ており、屋根は型崩れ、匂いも犬らしい使用感満載のハウスだ。自分の匂いが沢山ついているから新品よりも落ち着けるテリトリー。
お母さんとピンクハウスの間の方が、邪魔にならず、寝相の悪いお母さんが足で踏み押して死んだと思わせてしまうのもこのましくないし、お母さんが起き上がってすぐ目に入る場所を最後の場所として選んだのだ。
「……ん、あぁ……。この身体とはもうサヨナラだ。重い時もあれば軽い時もあったなー。人間と違って形に執着心はないから素直にでられた!ん?お母さん起きた?」
「ここちゃん?こーこーちゃん!ここ!こころーぉ!」
お母さんにとって人生で一番悲しい出来事となった。
「頑張ったね。ありがとーこころ。だーいすき!」
お母さんは泣きながらこころに告げた。
そして息子のケンシロウ、娘のサキに電話をした。
「お母さん!わたしここにいるよ!そっちじゃないよ!っあ!そうか...もう死んでいるんだった。
なるほど、、、久々の感覚になれない、、、天界に行くまではここちゃんスタイルのままなんだ!お母さん!ありがとー!これほどにもない幸せはここでしか貰えないものだった!私もお母さんずっと大好きだよ!この記憶は来世でも消さないでもらいた、、、い、、、っん?なんだ?これ、なんで?形を持たない魂に?なんで?そんな事って!え!?涙?私泣いてるの?この気持ちはなんなんだ!?別れたくないよ!
お母さん!けんくん!さきちゃん!その他もろもろ...うわーん!うわーん!どーして!どーしてー!!お母さんの気持ちが入ってくる、、、悲しいんだ!これが悲しいなんだー、、、」
その頃天界ではココロと同じ日に幕を閉じた魂たちが前世の形のまま天界へ戻ってきていた。
「おー!!久しぶりー!120年ぶりか?」
「いや、12年しか経ってないだろー!」
「今回の飼い主さんどうだったー!」
「選択ミスだった!殺されたよ!ワハハ!」
「お前選び方悪いからなー」
「うっせー!」
「今回絶対うまく行くと思ってまた同じ所選んだのに産まれて捨てられ殺処分よ。」
「だからいったのに、前の魂の里親んとこで幸せレベルあげてきや成績アップだったのにさぁ。」
「次は変な冒険せずにちゃんと選ぶよ!」
下界から上がってきた前世の犬の形でも魂のエネルギーで下界へ行く前の姿と違えど誰が誰と感じ取ることができるのだ。
久々に会えた何百の兄弟(魂)たちとざわついていると宮殿の大広間の後ろの扉から、品のある金髪に腰までストレートに伸びた髪、左右には美しいピンク色をしたソバージュがかった女神らしき人物が歩いてくる。
「私の愛おしい子供達(魂)戻ってきたのね。おかえりなさい。みんな笑顔笑顔!よろしい!」
そう言うと帰ってきた魂達は色んな出来事をその女性へ自慢げに話しだした。
「あのね!あのね!綺麗な海の中を泳いだんだよ!」
「俺は殺処分……」
「ぼくは食べすぎで病死」
「私は国王の愛犬として優雅に暮らしたわ」
「あらあら、みんな色んな経験してきたようね、でもなんか複雑な帰国な子も……まぁ次もあるから大丈夫大丈夫!アハハハハハ…」
この女神的な存在こそが動物天界の母メティス・フェアル。
動物天界の母【メティス・フェアル】
犬の魂を担当している上位神。
聖母でありながら赤い瞳に大いなる魔力をもつ偉人でありとても天然。
メティス様は元々下界で300万年も人間で生まれ変わりを繰り返しながら興味のない神の地位へと何となく上り詰め神となったのだ。
神が定めたルールは気に食わず、自分の絶対ルールがあり、天界での会議では自分が決めた話が通るまで口を膨らませながらプンプンとぶりっ子を上位の神々へ見せつけ、好き放題意見と言うより決定させようとぶっこんでいく美しいメティス様なのです。
このメティス様こそが人間を成長させる為に下界へ犬の個体に魂を派遣させている。
少し天然であり派遣ミスをしてしまうこともあるがその場合は直ぐに他界させ一旦天界へ戻したりすることもある。
メティス様は下界での個体がエネルギー切れした魂達の数を数える。
「553、554、555、55...あれ?いない?まだ戻ってきてないのかしら?」
「メティス様!どうなされましたか!?」
「556個目の魂が帰って来てないのよ。今日のはずなのにおかしいわね、、、」
「メティス様!でしたら下界を覗いてみては?」
「っあ!その方が早いですね。そうしまょう!たしか今回の下界での名前はココ……ロでしたね」
メティスの天然ボケは毎回部下たちからの癒し?でもあった。
メティス様は大広間にみんなを待たせ、一度自分の部屋へ移動した。
メティス様の部屋の壁には天上と部屋の真ん中から左右に素敵な模様が施された大きな鏡がある。
天界と下界を繋ぐ特殊な鏡であり、それを用いて魔法陣を空中に三つ作り出し、魔法陣から放てられた光がその鏡と反射し地面に大きな光った泉ができあがった。
「よし!できあがり!」
そう言うとメティス様は部屋の真ん中にある泉の手前まで歩き手と膝を着き顔を泉の中へポチョン!っと入れた。
そして、下界にいるこころを直視し喋ることができる。
「あーいたいた、ココローココロー!どうしましたかー?」
メティス様がそうこころに声をかける。
そうするとこころは下界のお母さんの側で離れようとしていなかった。
「悲しいていやだー!魂は喜びはあっても悲しいなんてそんな感情なかったはずじゃー、、、」
こころは泣き続けていた。
メティス様は何かに気づいたかの様に、赤い瞳で下界のお母さんの精神面や肉体的に感じる心の奥深くを覗き込んだ。
メティス様は驚いていた。
下界のお母さんが自分よりも愛に溢れているエネルギーを持っていることに。こころは肉体から離れても下界に対し悲しみを感じてしまうまで、下界のお母さんとの絆を何年も前から深めて来たことも。
メティスは様優秀な魂には自由に下界の飼い主を選ばせているが、そうでない魂には必然的に幸せに巡り会える様に下界へ送り込んでいた。
しかし、こころの場合は元々長生きせずに天界へ戻ってくることが多かった。
それは寿命がレベルが低かった為であり、飼い主は愛情は抜群でも犬を飼うにあたって知識が不十分だったからだ。
成績がよろしくない魂にはメティス様自ら下界を観察し幸せに長生きさせてくれる場所に送り込んでいたのだが、実はこころ自身が同じ家族の元に行きたい気持ちが誰よりも強く、また同じ下界のお母さんに会える様に、エネルギーを天界で放ち続けていた為、メティス側がこころに誘導されていた。
「ココロ、また会えますし本当のお別れになるわけではないのですから、とりあえず天界へ戻りましょ、、、」
メティス様がそう言うと、こころは素直に手を伸ばした。
このままだと次のステップに進めない為、とりあえず納得させ、こころを天界に連れ戻した。
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