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無惨に亡くなった人たちへの弔いは済んだ。

ならば次はコイツへの対応だ。本来ならゴブリンなどにするつもりだったが致し方ない。

まず、沼に溺れている獲物を引き摺り出そう。

「錬金」

地面が少し揺れ、いくつかの死骸が湧き出てくる。

ゴブリンはもちろん、何か豚や猪に似た獣がいる。

「鑑定」

『ゴブリン 魔物 魔石あり』

『トウンヒヒ 獣 』


獣の方は朝ごはんとして置いといて、ゴブリンの魔石の方だ。

ゴブリンの胸元に手を当て、身体を液状にして魔石を取り出す。

「鑑定」

『魔石 ゴブリン種』

情報が足りない。ならば鑑定情報をもっと狭く、濃く使って結果を出すしかない。

「鑑定、数値化」

魔力値、魔石の耐久値、付着している血に対する情報が数値として出てくる。

その中に一つだけ妙な数値が浮き彫りになって来た。

(吸収値0、放出値0。こんなゴブリンが持ちそうに無いような記録がわざわざ鑑定で出るって事はこの情報はこのゴブリンが生きている時に変わるということだ。)

頭の中にしっかりと造型していく。

想像するのはいつでも捨てられる便利な道具。

心の中には楽をする為の算段の構え。

…これだったらいけるかも知れない。

死体に右手を置く。

「鑑定、錬成、抽出。」

鑑定を使って体の成分を認識し、それが体のどこの部位に当たるのかを錬金で把握していく。CTスキャンの凄いバージョンみたいな物が頭に浮かんでくる。

そして、イメージするのは学校で使った分液漏斗。

欲しい情報が上に浮かんで来て取りやすくなるように。

反対の手にある魔石を近づける。

「付与、錬金」

黄金を作るように、そっと馴染ませていく。

もしかしたらこんなことなんてできないのが錬金魔法なのかも知れない。

だが、わからないことは全てやって行くべきだと改めて思うようになっていた。

今やったことは、死体に付着していた魂の残滓を採取し、魔石に付与したのだ。

そもそも、地球における錬金とは物質の方の黄金を作ることの他に、魂における黄金、つまり不老不死や神に近い存在を作り出す意味もあったのだ。

なら、この錬金魔法もできない理由はない。

だが、ミシリ、ミシリと魔石にヒビが入って行くのがわかる。

(元々魂に関係があったゴブリンの魔石になら、魂の残滓なら入れられると思ったが…)

かといって、諦めるわけにはいかない。すぐさま魔石の修理と魂を馴染ませるのを同時並行で行っていく。

「創造、錬成」

魔石を創造し、ヒビに馴染ませていく。

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何してるんだ?

なんか魔石をいじってんの?

牛乳、ルー、ニンジン、ジャガイモ、米

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一時間後。

手の中に黄金色の粒が見える赤い魔石がある。

はちゃめちゃ頑張った。それはもう、この世界に来て一番というぐらい。

「できた!」

もう殆どゴブリンの魔石の部分は無いが、とても安定していると思う。

試験運転に起動してみよう。

「錬成、分解」

魔石に埋め込んだ魂をほんの少しだけ削る。そう、ほんのほんの少し。

そして分解することで膨大な魔力が精製されるのだ。

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『感覚だけどすげー痛そう』

うおおおおおおおおおお!!!!!

すげーーーーーーーー!!!!!!

なんて冒涜なんだ!

人の心ある?

殺人鬼、魔力タンクになるw

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「創造」

造られた魔力を使って板状のプラチナと鉄の剣を作り出す。

ちなみに、創造は物の大きさによって魔力消費量が変わる。

「アイテムボックス、錬成」

プラチナをアイテムボックスの中に入れて近くの木を錬成で抉り抜きながら剣の持ち手を作っていく。

「錬成」

そして、剣を作り終わるとまだ食べてない朝ご飯のためにトウンヒヒという獣に手を当てて錬成し、肉を得た。

「と、言うわけで今から朝ごはんを作ります!」

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飯テロ注意!飯テロ注意!

グロ注意!グロ注意!

あなたには動物の痛さがわからないんですか!!

いや、もう死んでんだろ

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「賑やかやなぁ。ほい創造。」

昔キャンプで使った固体燃料を創造し、先程剣の持ち手にした木から枝を取り、家から持ってきたマッチで火を付ける。

次に、漫画肉のように骨を錬成させる。

出てきた骨を支えるための置き場を土を盛り上げて作り、肉を火にあたるようにしたら準備完了だ。

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漫画肉だ………!!!

ちょっと焼肉食べにいくわ

BBQしてぇ

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「どうだ!いいだろう?」

視聴者たちの反応を見て楽しみながら肉を回す。

そうして視聴者と話している時だった。

背後で気配察知が反応した。

「ッ!?」

すかさず後ろを見る。

そこにいたのは10匹以上の狼。群れで動いているのだろう。

____________________

あ、これ死んだな

次回、無常死す?!

あんな神を冒涜するようなことをするからだ!

____________________

「まだ死なねぇよ。」

剣を右手に、魂を燃料とした赤い石、賢者の石。いや、愚者の石を左手に持ち構える。

「まじでお腹減ったから。舐めプしないで殺すわ。」

新しいゴングが鳴り響いた。



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