第89話

~力耶side~


公園内が騒がしくなり始めて数分後。



計算通り、公園の前を通って病院へ向かおうとしていた赤旗の前へ立ちはだかる。



不意を食らった相手はどよめいていたが、すぐに手に持っている武器をかまえた。



バタフライナイフや鉄パイプ。



十数人の男が税イン武器を持っている。



こんなに大勢で、武器まで使ってけが人を襲う気だったのか。



「こんな奴らに負けるわけがねぇ」



強が、ふんっと鼻をならして言った。



「あぁ、そうだな」



俺も、同感だ。



俺はポケットに隠し持っていた果物ナイフをとしだした。



敵がその気なら、俺も武器を使わせてもらうことにしよう。



ナイフの先が月明かりでキラリと光、そして乱闘が始まった。



俺は、まず最初に同じようなナイフを持ったモヒカン男と向き合った。



考え通り、男の手には星マークの入れ墨が入っている。



モヒカン男は酔っぱらいのように体フラフラ躍らせながら、こちらへ近づいてくる。



その目は焦点が合っておらず、口からはヨダレを垂らしている。



こいつ……薬をやってるのか!?



俺はぎりっと歯をかみしめた。



どいつもこいつも、くそったれが!!



正常じゃない人間の相手をまともにしていては命が危ない。



俺は咄嗟にナイフをモヒカンの腕めがけて投げていた。



「ぐあっ!!」



ナイフはコントロール通りモヒカンの腕に刺さり、痛みにうずくまる。



俺はモヒカンが持っていたナイフを奪い取ると、刺さっているナイフを引き抜いた。



瞬間、腕から血が噴き出す。



「悪く思うなよ」



俺はそう言うと、ナイフの柄でモヒカンの後頭部を殴りつけた。



一撃で気を失い、その場にうつぶせで倒れる。



このままじゃ大量出血してしまうと思い、モヒカンに止血だけしてやろうと思ったが、しゃがみ込んでいる俺の後ろから怒号が聞こえてきてふりむいた。



目の前に迫る木刀。



くそっ!



モヒカンへの情けが仇になるとは……。



そう思った次の瞬間、俺の前に釘の刺さったバッドが現れ、まるで刀のように木刀の動きを封じた。



「強……」



「ボーっとしてんじゃねぇぞ力耶」



強はそう言い、相手の木刀を跳ね返した。



さすが、力は強の方がある。



「サンキュ」



俺はすぐにその場から離れ、近くの敵の顎に蹴りを入れた。



両手にチェーンを持っていたがピアス男だったが、武器を使う暇もなく仰向けに倒れ込む。



すぐに立ち上がろうとするピアス男の腹を右足で踏みつけ押さえつけ、転がったチェーンを奪う。



「へぇ、チェーンか」



「な、なにをする気だ」



青ざめるピアス男。



「なぁお前。ナイフとチェーン、どっちがいい?」



「な、なに言ってる!? あ、足をどけろ!!」

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