第64話

あたしらしくない……かぁ。



あたしは、恋羽と2人でこっそり集会場まで言った時のことを思い出し、クスッと思い出し笑いをした。



あの時は雨がふってきてどうしようかと思った。



でも、すぐに大志に見つかっちゃって、結局、アツシにタクシーで送ってもらったんだよね。



「放課後、もう1度教室に行ってみようかな」



「そうだよ。きっと、アツシとキョウならわかってくれるよ」



恋羽の言葉に気持ちを入れ替え、あたしは「頑張ってみる」と、頷いた。


☆☆☆


そして放課後。



あたしと恋羽は3階の空き教室の前まで来ていた。



中からは数人の話声が聞こえてくる。



「いくよ、恋羽」



「うん。ファイト、千沙」



トンッと恋羽に背中を押され、あたしは扉 をノックした。



中の話声が、一瞬途切れる。



そして、足音が近づいてくるのが聞こえた。



「誰?」



そう言いながら、ドアが開く。



「キョ、キョウ。久しぶり」



仏頂面をして出てきたキョウに、目いっぱいの愛想笑いを浮かべるあたし。



「千沙ちゃん!? 恋羽も一緒か」



キョウの後ろから、アツシの驚いた声が聞こえてきた。



いつもと変わらないその声色に、少しホッとする。



しかし、キョウはドアの前に仁王立ちをして、どいてくれる気配はなかった。



「何しに来た?」



「ちょ、ちょっと、話がしたくて……」



キョウの冷たい視線を浴びながら、あたしは緊張ぎみに答えた。



「話? 誰に?」



「み、みんなに……」



「なら、俺が話をきく。その後メンバーには話しておいてやるよ」



「で、でも……」



それじゃあ、あたしの熱意が伝わらない。



「なんだよ、早く言え」



キョウはそう言い、イライラと貧乏ゆすりをはじめた。



その表情はあからさまに不機嫌だ。



きっと、キョウはあたしの事を怒っている。



でも、頑張らなきゃ!



あたしはスッと空気を吸い込んだ。



「あ、あの。あたしも、次の集会に参加させてほしいの!!」



グッと汗のにじむ拳を握りしめ、そう言った。



しかしキョウはあたしに冷たい視線を送ったまま「ダメだ」と、一言いった。



その瞬間、胸に鋭い痛みが走る。



でも、負けない!



このくらいのこと、わかっていたことだもん!



あたしは、キョウから目を離さなかった。



「どうしても、参加したいの! あたしのせいで大志があんな目にあって……あたしだって、それは許せないことなの!」



「いくら許せない事でも、女のお前が出る幕じゃない。帰れ」



キョウはそう言い、ドアを閉めようとする。

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