第118話 100億を手に入れた男
魔剣争奪戦から二日後、参加者は全員治療を終えて退院となった。
寝て起きたら何故かタマコとアリスが横で寝ていたときは驚いたが、それ以上に嬉しいことがある。
「ほら、約束の
現金一括で100億が入った袋をハザードから手渡され、タローはウキウキな気分になった。
これで夢の生活――『働かずに生きる』を堪能できるというものだ。
と、家に帰ろうとしたとき、タローたちをドラムスが呼び止めた。
「ちょっと来い」
それだけ伝えると、ドラムスはギルド本部まで無言で歩き出した。
タローとタマコとプーは首を傾げつつも、ドラムスの後に続くのであった。
・・・
「…………なんだこれは?」
タローの開口一番はそれだった。
着いて早々にギルマスの部屋へと入るや、タローに一枚の紙を手渡したドラムス。
それは請求書だった。
その額、102億ゴールド。
・・・・・・・・・・・・は?
「オイふざけんな。どういうことだ?」
静かな口調でドラムスの胸ぐらを掴み上げるタロー。
ドラムスは目を背けながら事情を話す。
「お前たちが戦った場所は、国が管理している場所なんだが……思った以上に損傷が激しいらしくてな?
……壊したのお前らだし、思い切って請求してみました」(∀`*ゞ)テヘッ
「初めて人を殺したいと思ったよ今」
全然可愛くないオッサンの(∀`*ゞ)テヘッを見て青筋を浮かべた。
「というか何故私たちに請求するんじゃ? エリスやアリスにもこの話はしているのか?」
タマコの質問に、ドラムスは首を横に振った。
どうやらタローたちにしか請求してないようだ。
そしてもちろんタローが納得するわけがなかった。
「どうゆうことだテメェ……訳を話さんかい訳を!」
口調も段々おかしくなってきたので、ドラムスは説明した。
詳細は以下の通り。
まず今回の行われた場所はタイタン、つまり国が所有している土地であった。
で、ルールに『無暗に自然を破壊しないように』と記載したのでそれほどの被害は無いだろうと考えていた。
が、Sランクの力は想像以上で、思ったより被害が大きかった。
「というわけで修繕費の102億を払えっていうわけだ」
「……どーいうわけ?
てか何で俺一人なんだよ! それならムサシ達にも言えよ!」
「ムサシは基本的に修行のための道具に使うから金持ってねーんだ。ついでに今回の100億で魔王ハザードも金無いらしい」
「俺が原因作ってんな」
ムサシは払えない。次。
「レオンはほとんど身寄りの無い子供とかに寄付してるから、最低限の所持金しか持たなくてな」
「払えとは言いづらいな」
レオンも払えない。次だ。
「アリスは食費に消えるし」
「まぁ……アリスなら仕方ないのぉ……」
仕方ない。次。
「シャルルは新薬の製作に費やしてるし」
「(^・ω・^;)」
(訳:払わせるわけにはいかないですね……)
……次。
「ランは結婚費用に貯めたいらしいし」
「お幸せになってほしいな」
次ッッ!
「アキラは普通に散財してるから無一文だし」
「何してんだよアキラ! 堅実に貯金しろよ今の時代!」
……次?
「で、100億持ってるお前しか払えないんだわ」
残念。払えるのはタローのみらしい。
いや、もう一つ問題はある。
「2億は残ってますけど!?」
そう。100億払っても2億は払えないのだ。
だからタローには払えないのである。
「いや、貯金にちょうど2億はあるから払えないことも無いぞ?」
訂正。やっぱり払えるらしい。
「あったのかよ2億も。てか俺それ知らなかったんだけど?」
「良かったな。これで払えるぞ」
「払えるけど、もう俺の
・・・・・・・
・・・・・
・・・
――タロー自宅――
「ホントに102億持ってかれた……」
「ギャグじゃなかったんじゃの……」
「(^・ω・^)」
(訳:結果的にアキラさんと同じ無一文ですね)
大金持ちになって10分後、タローは無一文になった。
しかも貯金も0の最悪の状況である。
これでは、タローはこれから大嫌いな"労働"に時間を追われることになってしまう。
精神的にも追い込まれたタローに、残されたものは――
「……売るか、魔剣」
「売るのッッ!?」
部屋の隅に置いてある六振りの魔剣のみである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます