幕間 まあ要するにラブコメ回です
それは、アリスとアンブレラに遭遇する前のこと――
「マリアはいつタローちゃんに告白するのよ?」
「――ブフッ!?」
突如耳元でエリスが囁くと、タマコは思わず噴き出した。
「な、なななななななな何を言っておるのじゃエリスッ!?」
「だって……どう見ても貴女、惚れてるじゃない?」
「――グハッ!」
言葉のボディーブローがクリティカルヒットすると、タマコは吐血した。
フラフラになり、歩くのもままならない状態になるが、タマコはそれでも否定する。
「いやいやいや……ないだろうそれは」
確かに勘違いしてしまう場面もあった。
出会って間もない頃や、可愛いと言ってもらった時はドキッとしたし、ラン・ジード戦においても「あ、かっこいい」と感想を抱いた。
しかし、それは全て"使い魔になった"からだ。
以前も話したが、使い魔になると性別によって違う感情を抱く。
雄の場合は、主人への"忠誠心"が強く、雌は主人へ恋心のような"愛情"を持つのだ。
よって、タローへの感情は使い魔になったことによる『弊害』でしかない。
と、エリスにも説明すると――
「……え?」
エリスは頭に大きな"?"を浮かべた。
「……何言ってるのよマリア?」
「な、何って何がじゃ?」
「だって――」
エリスはその後、この発言を後悔した。
まさかその一言が、大事な親友をあんな状態にしてしまうなんて――
「それって言葉の通じない下級のモンスターの話でしょ? 知能の高い
「…………………………………………へ?」
その瞬間、タマコの頭の中に高速で情報が行き交った。
(主殿へ強い想いを抱くことは認識していた。だがそれは使い魔になったことによる弊害のはず――
で? それは下級のモンスターの話で、上級の私たちには適用されないと?
……あれ、ちょっと待って……なら私が主殿に抱いた感情は――)
タマコはぎこちない動きで振り向くと、後ろを歩くタローと目を合わせた。
「……どうした?」
――そのとき、不思議なことが起こった――
いつものように気怠さMAXが顔に出ているタローの表情が、
アルティメットで、
シャイニングで、
サバイブで、
ブラスターで、
キングで、
アームドで、
ハイパーで、
超クライマックスで、
エンペラーで、
コンプリートで、
エクストリームで、
スーパーで、
コズミックで、
インフィニティで、
極で、
スペシャルで、
ムゲンで、
ムテキで、
ジーニアスで、
グランドで、
リアライジングで、
オールマイティで……――
まぁ要するに、
超強力な乙女フィルターにより、ストライクゾーンド真ん中の顔に見えたのである。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「……マリア?」
親友が呼び掛けても、反応が全くない。
だが、しばらく呆然とすると、だんだんとその顔色が赤く染まっていったのである。
「……あ、あう……あの……え、と……///」
魔王の中でも屈指の頭脳を誇るタイラント=マリア=コバルト。
彼女の頭は人生で初めて、ショートした。
「――ふにゅ~~~~……」
「ちょ、マリア!?」
「ま、マリア様」
「Σ(・ω・^)!」
(訳:どうしました!?)
頭から煙を出しながら倒れるタマコに、エリスとシャルル、そしてプーが駆け寄った。
エリスが抱き上げるが、目はグルグルと回したままピクリともしない。
「マリア! 戻りなさいちょっと!?」
「わ、わたしが回復を!」
シャルルが自身の能力で回復させると、タマコはゆっくりと目を開ける
「――はっ! 私は何を!?」
エリスとシャルルとプーはそれを見てホッと息をつく。
完全に正気を戻したタマコは、起こったことを思い出そうと――
「おい、大丈夫か?」
する前に、タローが目に入った。
そして頭が回復しきれていないタマコに起こることは、必然的に決まっている
「タマコ?」首をかしげるタロー。
「………………………………………………」
魔王レベルの乙女フィルターが施されたその瞳により、もはや平静を保てるわけもなく……。
「カッコよすぎかよ……――」
そう言い残し、タマコは再び眠りにつくのだった。
シャルルとプーは慌てて、もう一度スキルで癒しを試みる。
「……何が起こったの?」
「あぁ……そうね~――」
状況を理解できないタローに、エリスは戸惑いながらも一言で説明した。
「魔王レベルの恋する乙女症候群、かしら?」
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