兄
夢の内容が凄かった。
いや、感動したとかじゃない。あれは前世の僕だ。
でも、兄が居た記憶はない。いや、小さかった頃のことだから、忘れていても仕方ないのかも知れない。
でも、幽霊に話しかけた覚えもない。これは僕に似た、誰かの夢なの?
わからなくなってきた。
でも、あの変な夢。白目の部分が真っ黒だった男の子。あの子に幽霊がとても似ていた。
僕は忘れていたの?
記憶の辻褄が合わないところがところどころある。けれど、記憶が薄れていくのなんて普通だ。だから、そんなに気に留めていなかったけれど・・・。
アルシアお兄ちゃんに重なったあの影と声。あれは?
僕はどうすれば良いんだろう。
解らない。ぐるぐると思考が巡るけれど、何も思いつかない。
『ちづき、難しそうな顔をしているよ?大丈夫?』
ルフラが優しく声をかけてくれた。
でも、どう返せば良いのかわからない。だから、曖昧に笑って返すことしか出来ない。
『ちづき?』
「えっと・・・もしかしたらの、はなしだけど、きおくがなくなったり、ぐちゃぐちゃにまじり合ったりすることってあるのかな?」
『あるよ。力の持ってる者なら、人の記憶を操作することなんて簡単。もちろん神様もね』
「・・・そうなのかぁ・・・それなら、ぼくのきおくが、くいちがっているのも、なっとくできるるのかなあ・・・・?」
『??どういうことかは分からないけれど、その可能性ならあると思うよ。だって、神様に会ったことあって、神獣、聖獣に囲まれてるんだもん。誰かに記憶をいじられてったって、不思議ではないよね』
「なら・・・ぼくのきおくが、ちがうこともありえるってことなのかあ・・・」
『そういことだね。』
ルフラが僕にすり寄ってきた。
『でもね、でもね、思い出したいって思ったら、大丈夫だよ。脳は賢いから。ちゃんと、奥底に閉じ込められているよ。大事な記憶はね。だから、落ち込まなくても、来るべき時に記憶は戻るよ。』
落ち込んでる僕を見て、ルフラが慌てて、言葉を連ねる。
僕は大丈夫だよ、という意味を込めて、ルフラの頭を撫でた。すると、ルフラの縮こまっていた尻尾が少しだけ揺れた。
「おい、和んでいる所悪いが、さっさと行くぞ」
『「へ?」』
声がいきなり聞こえて、びっくりして、ルフラと後ろを見ると誰か知らない人がいた。
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