ぬいぐるみ

バタバタと扉の向こうで何人かが走っている音が聞こえる。しかも、こっちに向かっているようで、だんだん音が近づいてくる。


怖くなって、ぬいぐるみを抱きしめながら、レドラの後ろに隠れた。やっぱり温もりがあると落ち着く。


「起きたのか!」


バアンッと派手な音を立てながら、何人かが入ってきた。


「ノルド様、そんなに大きな声を出さないでください。ちづきが驚いてしまいます」


声からして、男の人二人みたいだ。あと、軽い足音がいくつか聞こえる。


『ちづき!!大丈夫だったか??』


『ちづき!大丈夫でしたか?本当に心配で心配で』


『ちづき〜!!ごめんね!ごめんね!俺のせいで!』


ノウルたちだった。ホッとして、皆を見ると皆を普通の大きさになっていた。いや、普通って言っても、普通の猫とか、犬とか、そっちの方に。


順番に撫でてあげると、皆が必死に謝ってくる。ルフラなんて涙と鼻水でかっこいい顔が台無しだ。


なんでか、皆が誤っていくる・・・と、びっくりしていると、男の人が話しかけてきた。


「起きたか。ちづき?いや、ちづき君のほうがいい?」


金髪でショートで前髪をセンターで分けている。


「あ・・・うっ・・・え、えっと・・・」


いきなり大人の人と話すから、言葉に詰まってしまう。


「話しにくいなら、話さなくてもいいですよ。でも、話は聞いてください」


淡い水色の髪色の人が言った。この世界の人カラフルすぎじゃない?


聞くことだけなら別にできるから、頷く。でも、目を合わせるのは少し怖いから、ずっと腕の中に居たぬいぐるみに顔を埋める。


『ぬいぐるみじゃなくて、我らだろ!?』


『今度はぬいぐるみに取られるんですか!?』


『ぬいぐるみ・・・』


皆が今度は、僕の手の中からぬいぐるみを取ろうと必死になる。


ノウルとルフラはぬいぐるみの足に噛み付いて引っ張り、ラグワはぬいぐるみのお腹に爪を立ててひっかくから、すぐにボロボロになって、中に入っている綿が出てきた。


僕も、取られるのは嫌だから必死に対抗する。


「なんでとるの!」


『我ら以外を抱きしめるのは許さない』


『ルフラに取られたあとはぬいぐるみですか!?流石に私のこともかまってください!』


『俺らは構われないと死んじゃうんだぞ!』


言っていることは可愛いけれど、していることが全然可愛くない。


「いみわかんない!きょうのぼくは、ぬいぐるみのきぶんなの!」


『『『許さない(しません)ぬいぐるみ』』』


「なんで!?」


その後も攻防戦が続いて、ぬいぐるみの足が取れた。


「ぬいぐるみ・・・」


『『『勝った(勝ちました)』』』


皆誇らしげな顔をしている。もう呆れて、物を言う事もできない。


そして、気づいて男の人達を見上げると、こちらを真剣に見ていた。その目が少し怖くて、レドラの後ろに隠れる。


「ああ、すまない。凄く可愛らしい光景で・・・」


「ソユア様とアンルシア様の小さい頃を思い出しますねえ」


男の人達がしみじみと呟いている。レドラみたいだ。と思い、レドラを見ると、二人みたいな顔をしていた。


「君がここにいる事になった経緯を話すよ」


男の人が大きく息を吸って、吐き出した。それを何回か繰り返してから僕の顔を見つめてくる。今から何を言われるんだろう・・・。



ーーーーーーー

作者から

皆様、久しぶりの千月くんです。癒やされましたか?癒やされてください!本当にほのぼのを期待してた人すみません!

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