聖竜の子

アーノルド視点


やっと東西の方から、城へ帰ってきた。東西のところを東西と呼ぶのもな・・・。後で名を決めよう。


「お父様!!お父様!!見てください!ホーノとフーノが!!!」


そういう、アンルシアの腕の中にはホーノとフーノガいた。二匹ともキューキューっと元気そうに鳴いている。少し汚れているが、怪我はなさそうだ。


「風呂に入れてあげなさい。走って転ばないように」


「わかりました!行ってきます!!」


そう言って、早速廊下を走っている。ソンアリーはどこに行ったのだろうか?


だが、まずは聖竜の子供の件を先に片付けなくては。


自分の部屋に戻り、途中で別れたヨリックが来るまで待つ。少しすると、ヨリックが男を二人、女を一人連れてきた。


「そいつらか?」


「はい。こちらに」


ヨリックの後ろに立っている三人は怯えて震えている。別に怯えなくてもいい。もう、捕まることは決まっているのだから。


ヨリックが渡してくれた書類に目を通す。


この冒険者パーティーはDランク。まだ下っ端だ。


聖竜の子供は羽化したあとで、巣から落ちたところを拾ったらしいが・・・捕まえたようだな。


書類を見る限り、彼らは聖竜の子供を縄でしばり、飛べないように翼の一部を切っていたらしい。


確か、聖竜の子供と親は巣立つまで、痛みと思考が共有されるんだったか?そりゃあ、親も怒るだろう。


聖竜は家族愛が強い。一匹でも居なくなったら、大地がゆれ、川が氾濫するとも言われている。この場所を攻められただけで済んだのはまだマシな方だろう。


「はあ。いくらランクが上がりたいとは言え、これは許されないことだぞ?」


そう言うと、一番最初に口を開いたのは女だった。


「アーノルド様!私はこの二人に唆されて無理矢理やらさせられたのです!私は悪くありません!」


「何!?お前が提案をしてきたのだろう!」


「そうだぞ!お前が子供を捕まえると、聖竜が言うことを聞くといったんだろうが!」


「やめてよ!私はお前じゃないんだから!フルラっていうきれいな名前があるのよ!」


「知るかよ!お前の名前なんか知りたくもない!」


「キーキーうるせえんだよ。雌豚」


「わざわざあんたらに体を売ってあげたのに!ひどい!ね?アーノルド様!私だけでも!私は二人に無体を強いられたのです!!」


「ふざけるな!夜這いを仕掛けたのはお前だろう!」


頭が痛くなってしまう。女が元凶なのは分かったから下がらせてくれ。と、手をふるとヨリックが三人を連れて行ってくれた。


静かになった部屋を出て、聖竜の子供のもとへ行く。聖竜の子供が乗っていた馬車の後ろにかかっている布は破れている。だから、空がキレイに見えていて、今すぐ飛び立てるだろう。それを確認して、聖竜の子供を見た。


聖竜の子供はひどく痛々しい姿になっていた。きれいな白い翼が血だらけになっている。


それでも翼を大きく広げて、威嚇体勢をしている。翼を広げるだけでも痛いだろうに。


近づいて頭をなでててあげる。


「もう少しで両親が迎えに来るだろう。すまないな。守ってもらっているのにそういう事を忘れて、利用しようとする輩がいる。これからも何回かあるだろう。しかし、それで人間を嫌いにならないでほしい。」


これは心からの言葉だ。こんな事を言っても無意味かもしれないが。


グアアアアアッと遠くで鳴く声が聞こえる。聖竜の夫婦が迎えに来たのだろう。


聖竜の翼に引っかかている、ほどききれていない縄を取ってあげて、翼にヒールをかけてあげる。


聖竜の子供はキュアアアっと可愛い声を出しながら、翼を動かし始めた。そして、飛んだ。


向こうの方には聖竜の姿が見える。幸せな再会の瞬間だ。


今エッカルトが落ち込んでいるため、人を配置し、トラップは止めた。だから何も心配することはない。


さて、今度は白髪の子供か・・・。今日はやることが多すぎる。

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